妖精さんと一緒

いまい あり

妖精さんと一緒

少し先の未来の話。この頃、全員が肉眼で妖精を見ることが出来た。以前なら妖精の存在を疑う人もいたが、この時代にそんな人はもういない。


 昔は特殊な場所、特殊な方法でしか妖精と会うことは出来なかったが、今ではすっかり人との生活に溶け込んでいった。妖精はまるで人を守護する様に1人に1人の妖精がつき24時間一緒に過ごしていた。


妖精は15センチ位の体で1人1人違う衣装を着ていた。見た目はついている人の好みや理想が反映されていた。まるで自分の理想を見るようで妖精は皆から愛される存在となっていった。


「ママ、私ね妖精さんに名前をつけようと思うの。」

「いいんじゃない。」


家族が揃うと妖精も家族の人数分揃い全員で手をつないで踊り始める。

楽しそうな妖精の姿に家族全員で眺めていた。


妖精は言葉を発することはない。しかし、人が話すことは理解できているのか熱心に聞いてくれている。頷いたり、首を横に振ったり、仲良くなると笑顔も見せてくれる。


「ママ、今日のことお話したら笑顔を見せてくれたよ!」

「良かったわね!」

「ママは妖精さんとお話しないの?」

「してるわよ。」

「パパやお兄ちゃんもお話してるかな?」

「どうかしら…。2人ともお話するのが苦手だからね。」


ピンポーン!


「あっパパ帰ってきた!」


「ただいま。」

「ただいまーー!」


「お兄ちゃんも帰ってきた!」


「どうした、いつになく嬉しそうだな。」

「うん!パパ今日ね妖精さんの笑顔みたの!」

「それは良かったな。妖精の笑顔を見ると幸せになるらしいぞ!」

「そうなの?やったーー!」


その夜、家族が寝静まった頃に妖精は起きだして一ヶ所に集まっていた。


「今日の成果はどう?」

「娘は同級生の髪の毛引っ張ってたわ。」

「息子は同級生の本を隠して困らせてたよ。」

「ママは昼間にパパと違う男性と会ってたわ。」

「偶然だ!パパも違う女の人と楽し気に食事してたぞ。」


「さあ、この一家の今日の分のデータを本部に送らなきゃだよね!」


妖精は人類全員の側にいて各々の人の行動や性格などを観察して負のデータを送っていた。そのデータは精霊の元に送られ、負のデータが溜まると、負のエネルギー発散の為に次の災いの日を決めるのだった。

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妖精さんと一緒 いまい あり @hinaiori

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