黒色矮星

@hakuto-

黒色矮星

 友人が死んだ。いつか死ぬような気がしていたし、いつまでも死なないような気もしていた。

 友人は、おかしいまでにいい奴だった。明るくて、優しくて、とにかくいい奴だった。なのに、いつからか学校に来なくなって、気付いたら死んでいた。俺には何もできなかった。元気になってもらえたらと送り続けたSNSのメッセージも、友人の心には届かなかった。でも、最後に届いたあの「会いたい」のメッセージに、気付くことができなかったあの数時間が、どうしても、いつまでも憎い。友人の住むマンションに駆けつけた時に、昨夜の雨に濡れた駐車場に倒れていた友人の体が、いつまでも俺の声に答えてくれなかったのが、いつまでも辛い。俺は、俺なりに友人を愛していたのに。

 友人が死んで1週間もしないうちに、葬式が行われた。小さな葬式だった。友人の遺影は、少し幼い頃の、笑顔の写真だった。今にもその笑顔のまま話しかけてきそうな、そんな笑顔。もう、笑って返事をしてやることは、どうしてもできないのだ。そう思うと、やるせなさが一気に込み上げる。どうして、どうしてと叫んでも、何も変わらない。うずくまって、溢れ出る声を必死に堪えることしかできない。俺の愛は、お前を救えなかったのか。

 しばらくは喪に服していたが、学校には行かなければならなかった。友人と仲が良いことを知っていた友人らは、明らかに気を遣ってくれていた。ありがたいと同時に、少し鬱陶しくもあった。友人が死んでしまった事実が、否が応でも心に浮かんできてしまう。だから、わざと明るく振る舞って、元気を装わなければならない。苦しかった。友人に、嘘をついているような気がした。そんなことはない、俺はちゃんとお前のために絶望しているよ。そう言えたら、友人は、多分笑って「わかってるよ」なんて言って許すのだろう。嫌だ。許してほしくない。お前を助けられなかった俺を、いつまでも許さないでくれ。

 時間は流れる。俺は、そろそろ立ち直らなければならないのだろう。でもこの苦しみを忘れたら、きっとお前は、誰の心からもいなくなってしまう。それだけは嫌だ。お前は生きていたんだ。そんなお前を、俺は愛していたんだ。絶対に忘れない。だから俺は、これから一生、苦しんで生きていく。

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