第6話 謎多き老婆

 アギトは五歳を迎え、また更に腕を上げていた。だがしかし、今は青空の下、苦手な勉強の時間である。何故外なのかと言えば、アギトは室内で勉強するのが苦手だからだ。貧乏ゆすりしたり、机に突っ伏したり、集中力も散漫で、ならば外ならどうかと机と椅子を外に持ち出し青空教室を開いてみたら、普通に出来たのである。

「それでは何故、隣のスイード子爵領との間を開発しないか分かるかね?」

「ん~、あっ!面倒だったから!!」

「馬鹿もん!隣接している子爵領との間を敢えて開発せず自然のまま放置する事で国が手出し出来ないようにする為じゃ、お主、昨日教えた事位は覚えておいておくれ」

 そう言って、干からびていると言っても過言ではないしゃがれ声の老婆は呆れたため息を吐いた。

「まぁ、それでもまだ五歳なのだから仕方ない…のか?ぬしの上の子らは皆、優秀だったから判断がつかんのお…ヒヒヒ」

「お婆婆ばば、怒っておいらを呪わないでよ」

 少し不安そうにアギトが言うと

「そんな事で呪うか、呪術とは早々そうそう簡単に扱うものではない。」

 またも老婆は呆れたため息を吐いた。

「お婆婆は、ひい爺が森に来るより前からここに居たんだよね?何してたの?」

 そう問われた老婆は少し考えるように顎を擦りながら上の方に視線をやり

「ふむ、特に何してた訳でもないが色々と面倒になってな、それで国を飛び出て森に入り、他の魔物らと同じく弱肉強食に身を投じて、縄張りを作り落ち着いた所で、やる事もないからのぉ、その辺の木の下で座り木と同化しとったのよ。

 それで幾年月経ったのか分からんが突然、目の前にギヤスのわっぱが現れて、襲いかかってきよってのう、どれ程戦ったのか知らんが最後は奴の動きを封じて話を聞こうとしたら、あの小僧、儂に向かって魔物がしゃべったって言いおって!失礼なやつじゃ!…まぁ話をしたら好きな女の為に森に自分が修める土地が欲しいと言うから、何やら面白そうだから協力してやってな、気づいたら今に至る訳よ…ヒヒヒ」

「やっぱり、お婆婆ってヤバイんだね!」

「ヤバくはないぞ。エーテルを上手く扱えば五百歳位は余裕で生きられるしな、ヒヒヒ」

 そう言って老婆は皺だらけの顔を更に皺を増やしてくしゃりと笑った。

「そうそう、それで最初に教えた話に戻るが儂が国と関わりたくない事を言ったら、今のように隣の領地との間に森を挟んでくれた訳よ……おっともう時間じゃな。お主の相手をすると何故か勉強が捗らんのうヒヒヒ」

 そう言いながら老婆はすぅーと音も立てず霧に消えてくように去って行った。無論、霧など何処にも無いが

 このお婆婆と呼ばれた人物、ある時は教師またある時は助産師、またある時は占い師、またある時は薬師くすし、してその実態は……最古の呪術師である。

 因みに年齢は不詳、分かってるのはアルトニア王国誕生前から魔の森に住み着いている事。

 後、普通はどんなにエーテルの扱いに長けていても、五百歳も生きれません。せいぜい二百歳位です。

 アギトは何故か戦慄を覚えながらお婆婆がが去った方を呆然と見ていると

「アギト勉強は終わった?」

 少し幼さも残るふんわりと優しい声音が後ろから聞こえた。

「エリザねえ!うん!終わったよ」

「そう、なら今からお話でもしない?ほら、私、もうすぐ学園に言っちゃうでしょ。だからその前に少しでもアギトちゃんや皆とお話したいのよ」

「良いよ!オイラもエリザ姉と話すの好きだから」

 本当はまだ昼食までは、一時間程時間があるので、剣の修行をしたかったが、エリザベートの誘いを断るような事は出来なかった。

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