5月13日

『そんな不安や希望を忘れてしまったのはいつだったろうか。配属先のド田舎は全員が顔見知りでプライバシーというようなものがない。そんな場所だった。起こる事件はせいぜい月に3件程度、夫婦喧嘩や子供が返ってこないなんてものはいいほうで、鶏が餌を食べないといったしょうもない相談や、風の音がうるさいといった苦情だった。そんな中でも先輩はそれなりに業務をこなしていた先輩は不思議な存在だった。夕方まではほとんど寝て過ごし、夕方になれば、警邏に出る。帰ってきてからは、晩飯をたべて、また寝る。毎日それの繰り返しだった。それでも村にとっては立派なお巡りさんだ。人々からはそれなりに慕われているようだ。村にまだ馴染めていなかった俺にとってどのようにして村に馴染んだのかそれだけが不思議だった。』

「そろそろかな」

「ただいま~」上機嫌に弾んだ聞きたくもない声が交番の中に響いた。

「お疲れ様です。なんかいいことありましたか?」

さていくら勝ったんだ?昨日は1万負けたらしいからな、1万戻ってきたのかなんて思いながら何も知らないふりをしながら先輩に尋ねた。

「イヤー警邏中に子供たちがお巡りさんお疲れ様です。なんて言ってくれてな!もうほんとに警察官になってよかったよと思ったよ。はっはっは、」

勝ったのは1千円か、ちょろい男だな。

「お前もいつも、大変だからな今日の晩飯は俺がおごってやろう!」

おっと、勝ったのは2千円だったか、自分の間違いを正すと俺は先輩に

「ありがとうございます。ごちそうさまです!」

と心にもない感謝をした。大体おごるといっても500円のコンビニ弁当だろうそんなに威張るな。

「お前にはいつも夜間パトロールをしてもらってるからな。感謝の気持ちだよ。」そう言い終わらないうちに、あいつは村唯一のコンビニへと漕ぎ出していった。

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