フェンタニルを飲んで…

葵流星

フェンタニルを飲んで…

フェンタニルの錠剤を買った。


価格はよくわからないけど、安いのだろう…。

麻薬よりも、ただ量が必要だった。

それも、すぐに…。


お金は高かったが、その価値はあったとは思う。

残業代も含めて、手元にお金があったのが幸いだった。


私は…いや、どうでもいいか、誰でも、どの立場でも...。


死ねれば良かった…。


もっと、楽に人生を歩みたかった。

誰かに隣を歩いて、先導してほしかった。

ゲームの攻略本のように、全ての選択肢とその先が見えていれば良かったのに…。


家を出て、電車に乗り、海に向かった。


今日は、晴れていた。


風もなく、穏やかな…そして、かつて幸せだった時の記憶を邂逅するために来た浜だった。


ビーチの砂との境のコンクリートの上に腰を下ろした。


そして、口に錠剤を放り込み、水で流して、今度は嚙みながら食べた。


ビニール袋をたたみ、ポケットに突っ込み、アルコールを飲んだ。


人生最後に見る光景がこれでよかったと嬉しく思った。


嗚呼、こんなにうれしいことはない…。



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フェンタニルを飲んで… 葵流星 @AoiRyusei

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