第11話俺色

伊藤太郎、41歳、バツイチ、子なし。ダメ元でマッチングアプリを始めた。バツイチ主婦、バツニ介護士、バツイチ子あり主婦、バツイチ中国人、色々な女に会ってはワン・ナイトで終わっていた。工藤由美。期待は、全然してなかった。しかもメールし始めて二ヶ月会っていない。たまたま会う事になった。改札口で待っていると


「太郎さんですか?」


と瞳の大きな控えめな女に声をかけられた。太郎の体に電流が走った。可愛い。


喫茶店に、向って歩いてても違和感なく話せている。不思議だ。嬉しい。久しぶりにアウェイからホームに帰って来て安心してプレイ出来てる感じだった。


喫茶店に着いても話す言葉は発見しやすかった。仕事、趣味、離婚話、どれを取っても楽しい会話になった。もしかしたらこの人だったら真面目に付き合ってくれるかもしれないと淡い気持ちを抱いた。シングルマザーだなんて感じさせない雰囲気を身に纏っていた。由美は、写真にモザイクをかけていた。だからもっと違うイメージを俺はしていた。嬉しい誤算だった。前日、夜中まで友達と飲み会をしていて由美と会う事をあまり意識してなかった。期待なんてとてもしてなかった。しかし、話が何故か止まらない。上手く恥ずかしい事も言える。夕方近くなったので俺から帰りましょうか?と声をかけた。


そして帰りの電車を俺は乗り間違えた。それくらい由美の事が気に入ってしまった。


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