第一章　暗号の残響

　公安警察第零課、通称「ゼロセクション」。

　存在しないはずのこの組織は、国家の安定を脅かす存在を秘密裏に排除する。

　柊隼人は、薄暗い分析室でモニターを睨んでいた。先日の暗号を解読するため、結城玲奈（ゆうきれいな）がキーボードを叩き続けている。

　「解析はどうだ？」

　「……厄介な代物ね。RSA暗号を複雑に多重化してる。けど、興味深いものが見つかったわ」

　彼女は画面を指差した。

　《D-17》

　それは、日本国内のエネルギー関連施設を示すコードだった。

　「狙いはインフラの破壊か？」

　柊が呟くと、結城はわずかに眉をひそめた。

　「単なる妨害じゃないわ。これが示す座標は……関東電力供給センター。ここを落とされたら、首都機能が一時麻痺する」

　柊は素早く携帯を手に取った。

　「藤堂課長に連絡する。すぐに動くぞ」

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