サウナビック
@lucky24
第1話
Kは製鉄所で電気工事の設計をしていた。中部地方に転勤しており、もうすぐ30歳になる。
他県の地であるので友達、恋人もいない。週末は、一人寂しく会社の寮で過ごすか、テニススクールで汗を流すかだ。いつもどおり、スーパーで夕飯を買って帰ろうとしていた。
ふっと性欲が出てきて、スマホで近くの風俗店を検索した。いつもは隣の県の風俗街に行き事を処理するのだが、今は原付で来てしまっているので、隣の県にいくのは現実的でない。
検索してみると、ここから数キロ先に小さな繁華街があり、そこに風俗店があった。
地方の国道に原付をはしらせ、高速道路の高架橋の下をとおりぬける。帰宅時間からか車どおりも多い。信号を左折し、パチンコ屋に原付を停めた。居酒屋、ラウンジが少なく、客引きのいない静かな駅近の繁華街である。
パチンコ屋の警備員が話しかけてきて、「サウナをりようされるんですか?」と聞かれた。
「へ?サウナ?」と拍子抜けな返答をした。
すると怪訝そうに警備員が「ここのパチンコ屋サウナもへいせつしてるんです。」
そう言われた看板を見ると、サウナビッグとかかれたゴリラの絵がかいてある看板だった。
バサッと地面を布で覆う音がしたので音のほうを見た。
パチンコ屋の前でホームレスが段ボールをひいている姿が映り、段ボールに座ってうずくまっているのが目に映った。
警備員も僕の顔をみて、「あの人、いつもここにくるんだよ。駅近くだし、パチンコ屋近いからたまに恵んでもらおうと声かけてもめごとになるんだ。」
「そうなんですか。今日は飲みに来ただけなんです」とこたえて、踵を返した。
「きれいな原付だから、盗まれても責任とれないからね。」と後姿の僕に声をかけた。
駅近いなので駅利用者の往来がある。コンビニでお金をおろして、Kは風俗店にはいっていった。
指名の女の子をみても気に入る女の子がいない。黒服に「どうですか?」「申し訳ないです」そう言って店を出た。やることがない。ラウンジいっても原付だから酒ものめない。
風俗の階段を下りて、外に行く。もう日も暮れて、夏の雨がアスファルトから蒸れた空気が上気になり熱く、鼻をこそばゆがらせる。駅からサラリーマンが疎らに行き来する。
Kはどこにいこうか迷っているが、今から会社の寮に帰る気持ちにならない。
繁華街を散歩し、ラウンジのネオンが点灯し、居酒屋の看板に灯が付く。そうして歩き回ると、原付をとめたパチンコ屋にたどりついた。
パチンコ店の先ほど警備員が「飲みにいかなかったんですか。」
「いやあ。あまり気に入りそうな店が見つからなくて。」
「ここは寂れてるからねえ。サウナでもはいれば。中に飲み処があるから。人も少ないし落ち着くよ。原付もここの店の駐車場つかってるし。」
Kはサウナをほとんど経験したことがなく、警備員に聞くと、中はカプセルホテルがメインだという。Kは会社のストレスを発散したく、カプセルホテルという新しいジャンルに飛び込むことにした。サウナ店にはいると、カウンターの人が「サウナ利用ですか?宿泊ですか?」と聞かれた。
Kは「サウナ利用です」とこたえて、1000円払い、館内着をもらった。
1Fはパチンコ店、2Fはフロント、3F休憩室、4Fがサウナであった。
4Fに行き、ロッカーで着替えをする。日帰り者のカギはオレンジ色のリストバンドで4Fになる。
ロッカーの数は30以上あり、喫煙所併設である。
浴場は、白湯とヒノキ風呂の浴槽二つとドライサウナ一つである。真ん中には柱に取り付けられたシャワーが4基取り付けられて、あとは、座りながら体を洗うシャワー台がいくつかある。
体を洗い、ヒノキ風呂にはいり30分たった。ドライサウナを浴びようとしたが、室温は100度だった。かなり熱くて、床も高温になっており歩くと足の裏が痛い。3set行い、椅子にすわり、目を閉じ上を向き、口を開けると、脳震盪起こしたかのように、視界がぐらぐら揺れている感覚におちる。これが整うとういうことか。おじさんたちはこうゆう遊びよくしってるなと思いかんしんしてしまった。3Fの飲み処にいき、暖簾をくぐり、カンターについた。
お品書きを見て、焼酎と冷ややっこを注文した。
「ここは、アンダーグラウンドよ。あんたみたいな若者がくるとこじゃないわよ。」と女性従業員に言われた。「そうなんですか?でもいごごちいいですよ」と返事をした。
「もうちょっと年齢いってからきたほうがいいわよ。社会不適合者になっちゃうわよ。ここはいろんな人いるけど、共通してることは、貧乏なのか、人恋しい人、行き場の見つからない人が来るとこよ」そう言われ、客層をみると、浮浪者の風体の男、入れ墨のある腕のある男、髪が長くて前歯のない男等、今までに関わったことない人種が客人だった。
「そうそう。そうだよ。まだはやいよ」男の従業員も話に入ってきて、若い人がいるのを珍しさから
話しかけてきた。「個々の隣に、休憩所あるでしょ?で、はじにソファあって、いつも寝てるか、新聞読んでるおじさんいるでしょ?」
「いますね。話しかけられたんですが、変わり者だなあと思いましたよ」
「そうなんです。変わり者なんです。運送会社ではたいらいてたんですが、定年退職してから、ここに居座ちゃったんですよ。住所もないし、身寄りは兄弟だけなんで、死んだときとか緊急連絡先聞いてるんですよ」
「しかも、寝るのはあのソファだから、あいつ専用になってます。」厭ったらしい顔で言っている。
掃除してるとそのおじさんが来て、俺がやるからよこせってい言ってきて邪魔するとのこと。
チェイサーのセットも100円でサービス受けれるのに、それもいらないっていうとのこと。
「ひどい変わり者ですね。ここらへんで浮浪者みかけたんですけど、年金もらえてるんだから、彼は勝ち組ですね」
「そうかもしれないな。でも、死んだとき警察呼んで、大変そうだなこりゃ。営業休止しなきゃならねえな。」男性定員はそういい、キッチンにもどっていった .
ソファで寝ながら新聞を読むあいつは、TVをみながら笑い声をあげる。誰かのスマホが鳴った。電話に出てしゃべっていると、あいつが「うるさい。うるさい。」っと文句をいう。
Kはおまえのほうがうるさいし、邪魔だと思った。
「おい。なんだおまえは。」電話の男は怒号をあげた。
口論になっている。取っ組み合いが始まった。人だかりができてみんながみている。あいつは、頭を下げて相手の胸を押す姿勢になって抵抗している。あいてが大外刈りであいつをなげたおした。鈍いおとがした。
泡をふいている。頭を強打したらしい。
周りの人がはけていく。飲み屋の店員も横目で見てもとあった仕事を始めている。休憩室はKとあいつだけになった。フランそわーじず・サガンの「かなしみよこんにちは」を思い出した。
プレイボーイのお父さんがちがう女の人とキスしているところを目撃して泣きながら走る彼女は翌月自動車事故にあい、その話をを父親と娘は話さない空間や感覚を描いている。
「太宰治 トカトントン」もそのニヒリズムを描いている。
小説にでてくるその感覚がKに想起させた。
社会とは人間が組織しての共同体だがある一線をこえたら他人事になる感覚がある。
Kは大学の友人に相談し、そのことを話した。
友人は社会ってそうゆもんだよっと軽く返した。
サウナビック @lucky24
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