第5話
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快晴の空と、出かけるにはちょうどいい気温。
昔は出かけるとなると和服ばかりだったけれど、今日は花柄のワンピースにヒールの高いサンダルを履いた。
あらかじめ水族館と伝えていたおかげか、仙太郎もシャツにジーンズといういつもよりラフな格好をしている。
水族館に来ているのもほとんどがカップル。
…ほら、これでデートに見えないほうがおかしいでしょう。
こういうことには疎い環境で育ったけれど、この私にやってできないことは無いわ。
「行きますよ」
チケットを購入した仙太郎が、そう私に声をかける。
敬語だけど、『お嬢様』って呼ばないだけマシかしら。
並んで歩いて館内に入ろうとすれば、目の前に現れる階段。
「階段ですね。お手をどうぞ、お嬢様」
すっと手を差し出されて、私も素直にその手を借りる。
まぁ階段だから仕方ないわねと、胸の内で思っていれば。
「ちょ、見てあの人のエスコート…!めっちゃスマート!私もやってほしい!」
「はぁ?聞いてなかったのかよ、アイツ『お嬢様』って言ってたぞ。ガチもんのお嬢様と執事だろ」
「あー…、言われてみたら空気違うかも。お互い慣れてそうだし」
「だろ?それにお前、実際俺が“アレ”したら恥ずかしがってすんなり手ぇ取らねぇだろ」
「そりゃ恥ずかしいでしょ…!普通のカップルには無理だわ…!」
近くにいた見知らぬカップルの会話が聞こえて、「はぁ!?」と言いそうになるのをなんとか堪える。
何よ、普通のカップルなら恥ずかしがるものなの…!?
でも私は小さい頃からずっと“コレ”なのよ…!
いまさら恥ずかしがるほうが変でしょ…!?
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