第5話 初デート 後編

 ハンバーガーを食べ終えた僕達は、トレイを指定の場所に返してファーストフードコートを離れた。

 

 「伸司、これからどうする?」

 「モール内を見て回ろうか。掘り出し物があるかもしれないぞ」

 

 ウィンドウショッピングか。悪くない。


 「伸司、何か欲しい物とかないの?」

 「欲しい物? ゲームくらいかな」


 ゲームか。最近していないな。


 「僕、最近ゲームしていないんだよね。何か面白いものってある?」

 「そうだな……。無料でダウンロードできるFPSぐらいかな」

 「FPS? 何それ?」

 「ファーストパーソンシューティングゲーム。一人称視点で戦うゲームだよ」

 「ふ~ん……。戦争ものか何か?」

 「そうだな。戦場で銃を持って戦うゲームだな」

 

 戦争ものは怖いな。ゲームと分かっていても恐怖感を覚えそう。


 「あっ、このバッグかわいい」


 バッグ屋さんの表にあった、可愛らしい小物バッグに目が留まった。なかなか良いデザインで可愛いらしい。それに小物なので持ち運びしやすそう。


 「へえ~、明菜ってそんなのが好きなのか」

 「うん、デザインが良くて可愛いものが好きなんだ」

 「因みに幾らだ?」

 

 伸司が値札を持った。

 値段は一万五千円。僕達のお小遣いではすぐに買えない。


 「結構な値段だな。今の俺じゃ買えない」

 「買わなくてもいいよ。ただ良いなって思っただけなんだから」

 

 伸司が悔しそうな顔をしている。もしかして、彼氏として初プレゼントをしたかったのかな。なんか少し申し訳ない。


 「そうだ。雑貨屋に行こう。良い物があるかもしれないぞ」

 「そうだね。行こうか」


 伸司の肩が僕の腕に触れた。そのとき――――。

 

 「彼氏だから良いよな?」

 

 僕の右手に指を絡めてきた。これは恋人同士の初繋ぎ。ちょっと恥ずかしい。


 「うん」


 そのまま雑貨屋に入って、良い物がないか物色した。

 ここもなかなか良い物があるな。でも、必要ではない。


 「あっ、あっちにガチャガチャがある!」

 「何処だ?」


 ガチャガチャがたくさんあるところを指差した。

 一店舗分がガチャガチャで埋め尽くされている。何か面白いものがあるに違いない。

 

 「伸司、行こう!」

 「うん」


 ガチャガチャをひとつずつ見て回ってみた。

 結構アニメグッズがある。その他にもカブトムシの玩具や牛乳パックなどの飲料の玩具もある。面白い。


 「伸司、これ良くない?」

 「どれ?」

 

 伸司に大人気アニメの玩具を指差して見せた。これなら欲しくなるはず。


 「お? 結構良いな。一回やってみるか」


 三百円を入れてレバーを回した。出てきたのは一番人気のキャラクター。アクセサリーとして付けられるようになっている。


 「作りが綺麗だな。バッグに付けておくか」

 

 バッグに飾られた。なかなか様になっている。


 「良い感じだね。可愛い」

 「明菜との思い出の品として一生付けておくよ」

 

 今日の伸司はなんか格好良いな。でも、何故脚を見るんだ。そんなに良いのかな、脚。


 「ねえ、伸司。伸司ってさ、脚が好きなの?」

 「何だ? 俺の性癖が知りたいのか?」

 「だって、脚ばっかり見ているから気になるんだもん」

 「わざと見ているんだよ。明菜がその気になるようにな」


 一気に顔が赤くなった。

 この人は!


 「なっ! なるわけないでしょ!」

 「それはどうかな。今だって恥ずかしがっているじゃないか」

 「うっ、それは……」


 僕はエッチな子じゃない。だけど、伸司の視線で少し興奮している。伸司ってこういうことに慣れているのかな。


 「まあ、明菜がその気になったら、俺もマジになるけどな」

 「ごめん。未成年だからやめて」

  

 伸司の言葉を聞いて、一気に冷静さを取り戻した。

 この年で妊娠なんて有り得ない。というか、子供を育てるのは無理だ。

 

 「伸司、冗談だよね?」

 「高校生になったら真剣に考えてくれよ」

 「マジなんだね」


 この人、マジで言っている。なら、将来設計を考えないといけないな。


 「伸司、真剣に考えている?」

 「考えているぞ。明菜は違うのか?」


 伸司、一体何を考えているんだ。僕は君の親友なんだぞ。


 「違くはない……けど」

 「俺は明菜のことが好きで付き合っているんだ。浮気なんてしないから安心しろ」

 「うん、分かった」

 

 ガチャガチャの店舗から出て、通路にあるソファーに腰掛けた。


 「明菜、帰るか? 何もすることないし」

 「そうだね。帰ろうか」


 買いもしないのに見て回るのは迷惑だ。さっさと帰って休もう。


 「伸司、行こう」

 「うん」


 僕は伸司と手を繋いでショッピングモールの駐輪場に向かった。

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