爆笑の妖精と涙の行方

ポロポ

爆笑の妖精と涙の行方

 深い森の奥に、その妖精は住んでいた。名はルーファ。彼は妖精の中でも珍しい「笑いの妖精」で、どんな悲しいことがあっても笑ってしまう困り者だった。


 ある日、盗賊団が森に現れた。彼らの目的は「妖精の涙」。その涙は万能薬とされ、高値で取引される貴重なものだった。妖精は強い悲しみや苦しみを感じたときに涙を流す。ならば、無理にでも泣かせればいい。そう考えた盗賊団は、ルーファを捕まえて涙を搾り取ることにした。


「さあ、泣け!」


 盗賊団の男たちはルーファを縛り、あれこれと脅してみせた。しかし、ルーファはケラケラと笑うばかり。


「いてて、やめろってば!」

「泣けって言ってんだよ!」

「くっ、くふっ……がはははは!」


 どれだけ痛めつけても、ルーファは泣くどころか声を上げて笑い転げるのだった。困った盗賊団は、ルーファに悲しい話を聞かせ始めた。

 男の一人が口を開く。


「俺の昔話をしてやるよ……ガキの頃、腹が減ってなぁ……」

「くっ、くっ……ごめん、声が、くくっ!」


 盗賊団の男は真剣に過去の不幸を語っているのに。それに反してルーファは声を押し殺して笑い転げている。男の話がどんなに悲しくても、ルーファの笑い声は止まらなかった。次第に盗賊たちまでつられて笑い出し、ついには全員が笑い続けるという奇妙な状況になった。


「は、腹が痛え!」

「おい、笑いが止まんねぇぞ!」


 ルーファの魔法は、聞いた者の「悲しみ」を「笑い」に変える力だった。哀れな盗賊団は涙を流しながら爆笑し続け、とうとう村へと戻るしかなくなった。


 それから数日後、盗賊団の仲間が笑いながら村の広場で踊っている姿が目撃された。村人たちは最初こそ不審がったが、次第に彼らの陽気な笑い声に惹かれ、盗賊団は「喜びを届ける芸人」として活動するようになった。


「悲しい話があったら、俺たちに任せろ!」

「ルーファの笑いの魔法で、笑いと幸せを届けるんだ!」


 そう語る盗賊団の団長の胸元には、小さなガラス瓶が光っていた。瓶の中には、ルーファがこっそり流した一粒の涙が輝いていた。それは「笑いが止まらないほど幸せだった」ときに生まれた、特別な涙だった。


 ルーファは遠くの森の奥で、今日も笑い声を響かせていた。

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