第12話 心の扉
せなん「かなさん、僕の話を聞いてくれてありがとうございました。やっぱり僕、大丈夫です」
かな「え?大丈夫なわけ……」
せなん「明日も生きてますから。安心してください」
絶対違う。せなん君の手が震えてる。また無理して言わせてしまった。本心で言っていないのは分かるのに、本心が分からない。どうしよう。
……包み込むイメージ。そうだ!私は想像のアーツク、出来ないことはないはず。心ってどこにあるんだろう?いや、想像して。包み込んで……
かな「本当は、私に話を聞いてもらっても何も解決しないのが分かって、早く死んでしまおうって思ってるんじゃないの?」
せなん「なんで?心を読まれた?」
かな「確かに、私はただ聞くことしか出来てないけど……」
せなん「かなさんには大切な人がいる!充実した毎日を送っている!貴族に下民の気持ちが分かるもんか!」
せなん君、焦ってる。なら、私は冷静に。
かな「分からないよ。私は心を閉ざした事ないし、大切な人がいて幸せだと思っているから。でも……」
私は想像のアーツを使って、一輪の花を手の上に咲かせて見せた。
かな「今、この花は私の手の上にあるよね?」
せなん「……はい」
私はせなん君から見て、花が見えないように手で隠した。
かな「私の手の上に花はある?」
せなん「……あると思います」
私は隠していた花を見せた。
かな「正解。この花をせなん君の心に置き換えると、心はいつもせなん君の中にたしかにある。黒い扉で隠されていてもある。なのに、せなん君はそれを真っ黒だと言ったの」
せなん「何が言いたいんですか?」
私は、手の上の花を枯らした。
かな「せなん君は、自分の心を自分で殺したんだよ。せなん君は死にたいって言っていたけど、その前に自分で自分の心を殺さないで欲しいな」
せなん「僕は死ぬからいいじゃないですか」
かな「せなん君の心は、生きたがってる!扉の奥は、すごく綺麗だったよ。自分で自分の心を見失わないで!自分には、心を開いてもいいんじゃないかな」
せなん「……でも、僕の心は殺されたんですよね?」
かな「枯れた花は、1粒の水で生き返るか。やってみる?」
私は手の上にある枯れた花に、水を1粒落とした。枯れていた花は最初に見た時と同じように、いや、それ以上に美しく咲いた。
かな「せなん君は孤独じゃない。本当に大切な人が近くにいることに、目を閉じているから気づかないんだよ」
せなん「そんな人、いないですよ」
かな「いないことの証明って、できないんだよ?……ねえ、せなん君」
私は息を吸い込む。大丈夫、言える。ぽろぽろこぼれてくる涙を無視して、綺麗に咲いている花をせなん君に握らせた。
かな「死にたいと思う日があるなら、生きたいと想う日もあると思うんだ。その日まで、待っていてもいいんじゃないかな。大切な人は、いつか愛してる人に変わるよ」
せなん「……」
かな「生きるって案外綺麗だからさ!そんなに閉じこもらなくてもいいんじゃない!」
せなん「あはは、かなさん。僕は閉じこもりじゃないですよ。ちゃんと毎日外に出てる」
かな「笑った!?」
せなん「かなさん泣きすぎです。僕より泣いてます」
かな「だって、せなん君いま初めて笑ったんだよ」
せなん「笑いますよ。……生きてますから」
かな「そうだね」
よかった。せなん君、もう大丈夫だね。
メリー「かな、今10時だよ」
かな「ええ!めっちゃ夜じゃん。なんか眠たいと思ってたんだよね。せなん君、また明日!」
せなん「はい、また明日」
家に帰りながら思ったことは、せなん君が心を開けるようになるには、まだ時間がかかるだろうなってこと。
私が出来たことは、言葉をかけることだけ。でも、笑ってくれた。ここからさきはせなん君次第だね。
メリー「すごいね。あんなに最後まで頑固だった心の扉を開けちゃうなんて。想像のアーツも使えてたし。あとさ、これも伝えて欲しいんだけど…ボソボソ……。」
え、そんなことが出来るの?心のアーツで?私には到底出来ないよ。
やっぱりアーツって難しい。
あとがき
枯れた花は1粒の水では生き返りません……。あれは、かなが無意識に使った想像のアーツです。この後のせなんはどうなるのでしょうか?
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