【怪談実話】短編四話『きっかけ』

有野優樹

『添い寝』『見守る』『たまたま』『きっかけ』

「添い寝」


友人が小学生の頃に体験した話。

夜、ふと目が覚めた。修学旅行先の見慣れない天井。隣からは友人の寝息が聞こえてくる。どんな顔をしているのか見てやろうと寝返りを打ったとき、目の前にいたのは全く見覚えのない赤ん坊だった。ただ、上を見上げていたそうだ。





「見守る」


飯田さんが幼稚園生の頃、祖父母の家に遊びに行ったときのこと。夜中に廊下の突き当たりにあるお手洗いにひとりで行くのは怖かったので、母に着いて来てもらった。用をたし扉を開けると母の後ろに老人の頭が浮いているのが見えた。それは、49日が過ぎた祖父の顔だった。





「たまたま」


「リビングでソファーに座ってテレビを見ていたんです。その日は一人だったんですが、後ろを誰かが通り過ぎたような気がして。あれ?と思って振り返ってみると、女性の生首が左から右に通り過ぎていって。後にも先もこの一回きりだったんですが、たまたま見ちゃうことってあるんですかね」






「きっかけ」


先日行った美容室で、担当してくださった美容師さんから聞かせて頂いたお話。


「友達に霊感がある子が居るんですけど、ずっと私の顔が見えなかったって言うんですよ」


その理由を話してくれた。


学生の頃から付き合いのある友人奈々さん(仮名)には霊感があり、日常的に幽霊が見えていた。


「顔に黒っぽいモヤがかかってて、あなたの顔がちゃんと見えない。でも嫌な感じがしないから大丈夫だよ」

と言われたことがあった。

何もわからない自分からすると少し怖いが、言われてからというもの、何も起こらず平穏に過ごせていた。


お互いに家庭を持ち、順風満帆に生活をしていたある日のこと。

顔にかかっていたモヤも、見えざる人も、何も感じなくなったと奈々さんから言われた。

きっかけがあったのかと聞いてみると、子供を授かったことがきっかけだと言う。


子供を授かったことが本当のきっかけかどうかはわからないが、何かをきっかけにして見えるようになってしまったり、または見えなくなってしまったりすることがあるのかもしれない。

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【怪談実話】短編四話『きっかけ』 有野優樹 @arino_itikoro

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