第4話 神さま、接続する

「にゃっはろ~」


あるVtuberが新作ゲームの実況をしていた。


えー、本日はね、『神さまになろう!』を遊んでみようと思います。

なんか、最近はやってるっぽいしね。

こう、みこにぴったりかなと思ったので、やってみます。

ということで。


「う~んと、こうして…」


ゲームの画面に切り替わり、みこの顔が右下に表示される。


「ゲームすたあと!」


天気予報で出てくるようなざっくりした日本列島が表示され、

シンボル化した各地の神社がアイコンとして並ぶ。

神社のアイコンはエフェクトアニメーションでおみくじの束になり…。


「あー、ガチャね。はいはい。回していきまーす」


ガラララララ、チャン


『細石神社(福岡県)』


「ほそ…いし…。合ってるかな?」


 さいせき?

 さざれいしだよー


などとツッコミのコメントが目に留まる。


「…さざれ石なのね。はい、さざれ石神社でいきまっしょい!」


みこがスタートボタンを押すと、神社の敷地が上空から見え、急降下する。

そして、暗転。


からら~ん


と神社の鈴の音が響き渡る。


『今日の神頼み』


ゲーム内の信者からの願いがメッセージボックスに表示される。


----------------------------

川の堤が壊されてしまい、田畑に水を引けません。

神さま、どうしたらいいでしょうか。

----------------------------


そこでゲームのBGMが途切れる。


(…あれ?)


ひざまずいて祈る、中学生くらいの

見慣れない女の子の姿が見える。

カジュアルなソーシャルゲームの雰囲気に合わない、

妙に必死で真剣な様子だ。


二人は思わず互いを見つめ合った。


というかあの格好。

巫女の姿ではあるようだけどえらく古めかしい。

そしてどこか懐かしい感じ。


「にゃっはろ~」


とりあえず挨拶してみる。

続きで声をかけようとして――。


(あ、戻ってきた)


見慣れた配信部屋だった。

願い事のメッセージボックスは

PCのディスプレイに表示されたままだ。

女の子の姿はもう無い。

もちろんゲームのBGMは演奏されている。


というか、配信の真っ最中だった。

気を取り直したみこは、何ごともなかったかのように配信を再開する。


「――ほうほう。

 水がないと農家の人たちが困っちゃうね!

 神さまパワーでズバッと解決しちゃおう」


山札から5枚のカードが手元に配られる。

みこはカードの中から1枚を選ぼうとするが――


・雷おこし(大雨が降る)

・ケンカ(パワー弱)

・謝る

・カンカン照り(日照り)

・シカトする


「ぶはははw しけてんねぇ!

 どうすんのよ、これ」


 手札ひでえw 全部捨てたいレベル

 内政せず戦ふっかけたら一発で負ける

 大雨降ったらワンチャン?

 ヘイト溜まるけどシカトかな


「う~ん……。わかったかも!」


何かひらめいたのか、エイッとばかりにカードを選択する


『謝る』


 わがった!(わかってない)

 そこはえりいと神よ


みこはコホンとせき払いすると、うやうやしく告げる。


「願うものよ、よく聞きなさい

争いはやめましょうよ! 命がもったいない!

みこの姉妹だったらどうすんだ? なんてね」


 おー、そうきたか

 初手土下座www

 最初に謝るのが日本人


などとコメントが流れつつ、選択された神さまのカードが

どういう結果をもたらすかの映像に切り替わる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る