妖精養成者増員要請~フェアリーブリーダー~

大黒天半太

妖精養成要請

 魔法の才能があると小さい頃に判定され、修行に入ったのは、まだ幼い時の話で、実際のところ、よくわかってはいなかった。


 何か、絵本の妖精が見えるようになれるとお師匠様に言われて、わくわくしたような記憶がある。


 魔力を感知する訓練から始まり、自分の内側の魔力や、周囲の様々なものが秘める魔力とその特性・属性を感じ分けられるようになれるまでは、あっという間だった。


 魔力感知と魔力識別の技能スキルは驚く程早く習得・開花し、周囲からも過分な期待を寄せられたが、そこからが長い道程みちのりとなるのは、幼い自分には想像もつかなかった。


 選ばれた子供らは、魔力量が増えるにつれて段階的に魔法の修行を始めるものの、魔力の制御が未熟な初期は、その制御から外れた一部を解放・放出するだけで、魔力を帯びた或いは魔力を好む存在が集まって来る。

 御多分に漏れず、魔法習得が思ったより進まなかった私は、ただ集めた魔力を漏出させて、実体があるのかないのかも定かでないモノを、ただただ集めてしまう状態だった。


 漏れ出た魔力に集る羽虫のようなモノは、妖精~妖怪に成る前の幼精段階らしい。


 それらの幼精に餌として自分の魔力を与え、ある程度の意思疎通コミュニケーションが取れる存在に成るまで育てる。

 そこまでは誰にでも出来るが、それ以上の段階、有用な能力を備えた妖精に育てるとなると、話は異なって来る。

 偶然にも、その妖精を育てる才能が私にはあったらしい。

 私の魔力が上がれば、集まる幼精は増え、その中から、波長の合うモノが魔力を吸収して、妖精へと成長する。

 成長した妖精が、魔力を駆使して様々な能力を発揮できるようになれば、特に人間が魔法を行使する際の補助の能力を持っていれば、それは支援妖精サポートフェアリーと呼ばれる。


 支援妖精サポートフェアリー養成してブリーディング、魔術師/魔導師の卵達へ供給する。それが妖精養成者フェアリーブリーダーの仕事だという。


 魔法使い(魔術行使者マジックユーザー)のサポートをする支援妖精サポートフェアリーのシステムによって、それ以前の世代とは、魔法の習得・実行に大きな差が発生した。


 支援妖精サポートフェアリーは、あるじである魔法使いの魔力の集積や魔術の構築を安定させ、未熟な者達の魔術の行使を補助した。


 魔法使いマジックユーザーの未熟さを補って魔術を安定して成功させ、或いは魔術師に疲れ知らずの集中力をもたらし、高度な術の応酬を長時間維持可能とする。それが、意思ある魔術兵器、支援妖精サポートフェアリーである。





 支援妖精サポートフェアリーシステムによる魔法技術の大躍進は、従来なら魔法使い・魔術師になることを断念せざるを得なかった人々に道を拓き、せいぜい魔法使いマジックユーザー止まりだった才能の人々に大魔導師ハイウィザードへ至る道を示したのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妖精養成者増員要請~フェアリーブリーダー~ 大黒天半太 @count_otacken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ