第11話 銭湯

 午前10時頃、私は銭湯に行った。

 昨夜に入浴を逃したので、銭湯でさっぱりしたかった。


 私は銭湯のロッカーに鍵をさした。鍵はなかなか動かず、私はやけに固い施錠にため息をついていた。


 露天風呂に入っている時、小雨がしとしとと降り注いでいた。

 雨粒が水面に弾ける様子を眺めていると、意識がぼんやり遠のいてくのを感じた。


 長風呂をしたせいか、湯から上がった後はめまいがした。視界が暗くなり、私はしばらく手すりにつかまっていた。



 入浴後は、食堂で昼食を摂った。

 頼んだのは、唐揚げ定食だった。味が気になったので頼んだという、それだけの理由だった。


 粒の立った白米は、粥状になるまで噛み、唐揚げはカリカリと音を立てながら食べ、私は一人黙々と食事をしていた。


 たっぷり1時間かけて食べた。私は重たげな腹を抱え、段々と眠気がやって来るのを感じた。


 

 銭湯に行ったおかげで、私はほんの少しの間だけ鬱々とした感情を忘れられた。


 私は自分の幸福を過小評価しているのかもしれない。そう思ったが、気分が沈んでいる時が多いので、そうなるのも仕方のないことだった。


 唐揚げ定食を食べられるほどには、幸福だった。胃は元々虚弱だったが、朝を控えめにしたおかげで食べ切ることができた。


 私には、まだ物を噛めるだけの歯もあった。だから、これはきっと幸せなことなのだろうと思うことにした。


 1日のうち、まだ半日を過ごしただけだった。私はゆっくりと流れる時間の中で、今後の予定についてしばらく考えていた。

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