第11話 答え、そんなものいらない
季節はめぐり、春がやってきた。
そして今日。
卒業式。
体育館には、花の飾りと涙と笑顔があふれていた。
誰もが、それぞれの“別れ”と“始まり”を胸に抱えていた。
式が終わり、校舎の裏手にまわると、見慣れた二人がいた。
永麻は制服のリボンを少しだけ直していて、
美土はいつものように壁にもたれて空を見ていた。
オレが近づくと、二人は同時にこっちを向いた。
「卒業、おめでとう。」
「ケタルもね。」
どちらも笑っていた。
気まずさも、ぎこちなさも、もうなかった。
「…なんか、不思議だよな。
あのとき、こんなふうに並んで笑えるなんて思ってなかった。」
美土がそう言うと、永麻が肩を軽くすくめて笑った。
「でも、こうしてここにいる。それが答えなんじゃない?」
春の風が吹く。
制服の裾が揺れる。
この風の向こうに、新しい道がある――そんな気がした。
「……これからも、きっと、いろんなことがあると思うけどさ。
また、こうして笑い合える関係でいたい。」
オレがそう言うと、二人は声を合わせて言った。
「もちろん。」
そして三人は並んで歩き出す。
まだ見ぬ未来へ。
少しずつ大人になっていく自分たちを感じながら。
桜が、風に舞っていた。
美土
「みい君ブランコで遊ぼう。」
優しくて居心地の良い声の持ち主。それは...
ケタル君だったよ。
想いと思い 夏都きーなFNW所属 @510buki_san
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