契約
小山啓介
第1話
みんなは妖精と言えば、どんなイメージだろうか。
小さい、美しい、いたずら好き、神秘的な力を持っている、加護を授けてくれる、他にも色々あるかな?
でも、僕が出会った妖精は、何だかよく分からない。
まぁ確かに美しい。
でも加護は授けて貰えなかった。元気は貰ったが。
小さくもなかった。むしろ僕よりデカい。
いたずら好き、これは当たってるかもしれない。ワタワタする僕を見て、ゲラゲラ笑っているようなヤツだ。
神秘的な力について聞いてみたら、「強いて言うなら、この美貌かしら」とドヤ顔してきたので、僕は考えるのを止めた。
それは本当に妖精なのか? とみんなは思うかもしれない。
しかし紛れもなく、彼女は妖精と呼ばれる存在なのだった。
いつも僕の周りをふわふわしている。
たまに姿が見えなくなって、「あぁ、別の面白いものでも見つけたのかな?」と寂しく思ったりもしたけど、気が付けばまた周りでふわふわしている。
「僕なんか見ていて楽しいの?」と聞いてみた事がある。
「知らないわ」はぐらかされた。
本当に、何が何だか分からない。
ある時ふと、そう言えば妖精って契約とかするもんじゃなかろうかと思い至った。
なので、思い切って聞いてみた。
「ねぇ、僕と契約してくれないかな?」
「いいわよ」
即答する彼女に驚きつつも、安堵で心がいっぱいになった。
「ところで、契約って具体的にどうすればいいの?」
「知らないわ」
「妖精なのに?」
「知らないわよ。別に明確なルールなんて無いし、お互いが納得すれば良いんじゃない?」
「身も蓋も無いな」
僕は苦笑した。でもまぁ、それが僕ららしいのかもしれない。
契約しても、特に何かが変わった訳ではなかった。
ただ、彼女は相変わらずふわふわしつつも、僕のそばから居なくなる事は無くなった。
相変わらず加護は無い。
数年経っても僕よりデカい。
やっぱりゲラゲラ笑っている。
神秘的な力? だから考えるの止めたって言っただろ?
娘ができた。
まさか彼女との間に子供を授かれるとは思わず、その時ばかりは世界の神秘を感じたものだ。
「この子もきっと将来、すごい妖精になるぞ」
「知らないわよ」彼女は優しく微笑んだ。
契約は続いていく。
僕たちみんなでふわふわしながら。
契約 小山啓介 @oyama086
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