妖精病【KAC20253】

愛田 猛

妖精病

妖精病




ビデオ会議がつながった。

吉祥寺助手は急いで三鷹博士に告げる。


「博士。大変です。金返せ、って目つきの悪い男が来ました。」


三鷹博士は落ち着いて答える。

「借金トリ降臨か。わはははは。金なら返さん、と伝えてくれ。わはははは」


「そんな、大〇興業みたいなこと言って笑ってないで下さいよ。大体博士は今、どこにいるんですか?」


「南のジャングル、トリコ雨林だ。わっはっは。」


「はあ。」

吉祥寺助手は溜息をつく。


「なんでまた、そんなところに。」


「ははは。頼まれてな。妖精の研究にやってきたのだよ。わっっは。」



「妖精ですか?そういえば最近妖精病って時々聞きますね。」


「わっはっは。その通り。 妖精病の研究のため、ここに来たのだ。トリコ雨林に借金トリ降臨か。わっはっは。」


「もう先生は…。どういうことを研究するように頼まれたんですか?」

吉祥寺助手は一応確認する。



「ははは。きみは最近、怪しい星が出現したことを知っているかい?」


「ええ。なんだか不吉な星だという噂になっていますね。宇宙放射線でも出ているのでしょうか。」」


「ははは。そこまでのことはわからないが、あの奇妙な星の影響で、妖精の卵が大量に繁殖したようだ。」」


「え?妖精って卵から生まれっるんですか?」

吉祥寺助手は驚く。



「わっはっは。ものの例えだよ。卵というより核なのかもしれない。


吉祥寺君、妖精というものは実在するし、数人から数十人に一人は妖精を見ることができる。知っていたかい?わっはっは。」


「え、そうなんですか?」



「わしも実は妖精が見える。だからこの依頼が来たんだな。わっはっは。」


「で、どんな調査を?」


「妖精の小さな卵が孵化すると、小さな妖精が沢山出てくるのだ。カマキリの卵みたいにな。わっはっは。」


「何がおかしいんですか?」


「その小さな妖精をうまく育てるのだ。そうすると、いろいろな姿になる。小さいうちから、ずいぶん性質が違うのだよ。わっはっは。」


「そういえば、妖精病っていろんな症状が出るらしいですね。」


「ああ。実は妖精病というのは総称だ。 いろいろな種類がある。妖精のいたずらだと言われているのだよ。わっはっは。」


「いたずらにしては悪意が見えるものもありますね。」


「わっはっは。鼻にソーセージをくっついたり、OKサインのまま指が動かなくなったり、という笑えるもの、というか比較的かわいいいたずらから、交通事故を起こさせたり、『俺は浮気してる。』という口癖が止まらず、離婚した例もあるぞ。わっはっは。」


「大変じゃないですか。早く治療法を見つけないと。」


「わっはっは。そのためにわしが動いておるのじゃ。トリコ雨林には妖精がたくさんいる。


卵を育ててな。小さな妖精がどのように変化するのかバリエーションを見届ける。


そして、使えるものや使いかたをを探したりするわけじゃ。わっはっは。」



「博士、それで調査の結果、何かわかりましたか?


「わっはっは。まずはいろいろな症状が出ているが、妖精病には独特の原因があるこということがわかったよ。わっはっは。」


「その原因って何なんですか?」


三鷹博士はもったいをつけて言う。

「実はな。妖精病は、体内に小さい妖精を取り込んでしまうことで発生するようじゃ。わっはっは。」


「え、じゃあ、妖精病はやっぱり妖精の仕業なんですね。」

吉祥寺助手は言う。


「わっはっは。正確には、まだ小さいころの妖精だな。成体と言われる妖精は、10-20センチにもなるから、そう簡単には取りこめないよ。孵化してまもなくの時期は肉眼では見えないほど小さいので、摂取してしまいやすいのじゃよ。わっはっは。」


「じゃあ、ワクチンの製造が必要ですね。小さい妖精を育てたらいいんでしょうか。」



「まあそうだな。わっはっは。」


「では、ワクチンを作ったんっですか?」


「いや。まずは感染しているかを調べる試薬からだな。わっはっは。」


「そうなんですね。出来ましたか?」


「ああ、出来たよ。妖星の影響で発生する妖精の幼生を養成して多様性を確認し、その可用性を調べてまずは水溶性の試薬を作ることを要請されたよ。わっはっは。


ついでに借金取りを追い返せ。はようせい!わっはっは。」


「ばかばかしい駄洒落ですね。♪よ~せ~ばいい~のに~」


「わっはっは。吉祥寺君、きみもなかなか楽しい男だな。」


吉祥寺助手は、さっきから気になっていたことを聞く。


「博士。何か今日はずっと笑ってますね。もしかして…」


「これも妖精病の一種の症状かもしれないと思って、試薬で確かめてみたよ。わっはっは。」


「で、結果は?…」

吉祥寺助手がおそろおそる聞く。


三鷹博士は快活に笑った。

「わっはっは。陽性じゃな。」


(完)



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