飛翔妖精 アイアンフェアリー!! [KAC20253]

海星めりい

飛翔妖精 アイアンフェアリー!!


 巨大ロボット『アイアンフェアリー』のコックピットに座るパイロット、ダイは、汗だくで操縦桿を握り潰さんばかりに力を込めていた。

 眼前の異星人が操る敵大型兵器――敵性コードネームは『メテオデストロイヤー』――が放つビームが、アイアンフェアリーの装甲へとクリーンヒットする。


「ぐおおおおおお!? 耐えてくれ……アイアンフェアリー! 後ろには街が……あるんだ!」


 ビームを耐えきった直後、ダイは相手の隙を逃さずすぐに攻撃態勢へと入る。


「くらえ! アイアン・フェアリー・ナックルッ!」


 右腕が火花を散らしながら、敵の胸板に直撃する。

 一瞬、やったようにも思えるがダイの表情はすぐれない。

「っ!? 浅かったか!?」

 ダイの言葉を示すように、メガデストロイヤーはよろめきながらも反撃し、巨大なパイルアームでこちらを貫こうとしてきた。

 ダイは咄嗟に回避するが、機体の動きが先程よりも鈍いのかかすってしまい装甲の一部が弾け飛んだ。


「くそっ、ビームを受け止めたせいでエネルギーが落ちてるのか!? このままじゃ……」


 警告音が鳴り響き、コックピットのモニターに「出力低下」の文字が点滅する。ダイは歯を食いしばり、スイッチを叩くものの、状況は変わらない。



 *******************



 その頃、アイアンフェアリーの動力炉の中では、全く別の光景が繰り広げられていた。

 そこには無数の小さな妖精たちが、キラキラした羽を震わせながら、巨大な歯車を回したり、エネルギー結晶に魔法の粉を振りかけたりしている。

 彼らは疲れの表情を見せてはいるものの、どこか楽しそうに、仲間同士で声を掛け合っていた。


「ほら、そこの新人! もっとリズムよく回して! ダイ君がピンチだよ!」


 リーダー格の妖精ラミィが、汗を拭いながら指示を飛ばす。

 指摘された新人の妖精は「えーっ、でももう腕パンパンだよー」と言いながらも、笑顔で歯車にしがみつく。

「うわっ、エネルギーゲージ下がってる! みんな、もうひと踏ん張りだ! 振動に負けるなー!」

 別の妖精が叫ぶと、全員が「オー!」と声を揃え、一斉に動きを加速させる。

 疲れた体に鞭を打ち、羽から光の粒子が飛び散る。動力炉の結晶が再び輝き始め、妖精たちは互いにハイタッチを交わす。


「やった! 復活だ!」


「ダイ君、気付いてないけどねー!」


「まぁいつものことだよねー。そういう盟約だしー。さぁダイくんやっつけちゃって―!」


 妖精たちは疲労を笑いものにしながら、まるでゲームでも楽しむように仕事を続けた。



 *****************



 コックピットでは、ダイは突然のエネルギーの回復に目を丸くしていた。


「何!? 出力が急上昇!? よし、このチャンスを逃すわけにはいかない!」


 彼は雄叫びを上げ、アイアンフェアリーを一気に加速させる。敵のビームを受け止めながらも前進し、パイルアームが再び振り抜かれる瞬間、ダイは機体を跳躍させ空中で回転しながら叫んだ。


「フェアリー・スパイラル・ブレイクッ!」


 アイアンフェアリーの全身が光に包まれ、螺旋状のエネルギーを纏った両方の拳が『メテオデストロイヤー』の胴体を貫く。そのまま爆発四散した『メテオデストロイヤー』の姿を見たダイは腕を振り上げながら。


「やったぜ! 今日も助かったよ……アイアンフェアリー。これからも頼むな」


 彼は全く知らない。自分の勝利が、動力炉で汗と笑顔を振りまく妖精たちのおかげだということを。



 ***************




 動力炉の中では、妖精たちがぐったりと歯車に寄りかかっていた。


「ふぅー、勝ったねぇー。皆、おつかれー」


「私たちのエンジン音が彼の勇気になってるんだからさ」


 ラミィが笑うと、他の妖精たちも「だね!」と笑い合い、疲れた体を休めながら次の戦いに備えた。悲しみなんて微塵もない。ただ、ちょっと疲れただけだ。


 そして、ダイが次の敵に立ち向かう時も、彼らはまた全力で歯車を回すのだろう。

 気付かれない英雄たちとして――


                                   ――完



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飛翔妖精 アイアンフェアリー!! [KAC20253] 海星めりい @raiki

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