その存在は、妖精などではなく。
蘇 陶華
第1話 きっと、自分の存在って、可愛らしくて妖精みたいって、思っている。
話すのも、悍ましい。
一体、何人の男がその魔の手に落ちていったか、
数えた事もない。
魅入られたのは、ドイツも、イケメンと噂された10代から、20代の男達であった。
別に、彼女に魅かれた訳でもない
容姿がいいとか、そんな訳でもなく。
どこにでもいる普通の女の子だった。
ただ、僕は、彼女が好みでなかっただけ。
側にいるから、好きになるかって?
なる訳がない。
彼女の魅力が僕には、わからない。
妖精?
笑えるよ。
誰が、妖精なんて言った?
妖怪なら、わかる。
彼女は、そんなファンタジーが似合う存在などではなく、
どりらかというと、ホラーだった。
「だよな」
僕を見下ろす恨めしい目。
それは、愛おしい目ではなく、ほとんど、白目の三白眼。
「もう少し、可愛く描けないの?」
激が飛んだ。
妖怪?
いいえ。
妖精は、自分の事を「音羽」
と言っております。
僕。
颯太に取り憑いた妖怪。
山寺に送り込まれた僕が、誤って解放してしまった妖怪。
もしくは、妖霊。
困った事に、彼女の前世は、花魁だったらしく、生きている時は、それは、男達が、彼女の美貌に、全てを投げ打っていたらしい。
どこにいったものか、その美貌。
僕の前では、恐ろしい形相になる。
耳まで、避けた口は、何もかも、飲み込んでしまう。
妖精。
とんでもない。
僕にとっては、妖怪。
彼女に命を捧げた先君に敬意を表して、昔は、妖精だったと言おう。
「あのな、人を描く時は、良く描くものぞ」
僕の書き込みを覗き込んで、妖怪。
いや・・・音羽は、言う。
名前は、妖精ぽいだろう。
音の羽。
きっと、元々は、ティンカーベルみたいな、考えだったんだろうな。
そんな柔い存在ではない。
ベルはベルでも、お寺の鐘だ。
そう、音羽は、山寺のある山に封印されていた。
裏切られた仕返しに、街中を火の海に陥れた花魁。
音羽。
彼女を妖怪にしたのは、数多の男達だ。
彼女の真心を操り、地獄へ落とした。
音羽を誰が、責める事ができただろう。
罪の意識から、何十年も彷徨い、自分を消し去ってくれる存在を探し求めていた。
音羽は、純な存在だったんだ。
美しく絵巻にもなった音羽の肖像画。
妖精のようだった。
妖精の筈だった。
今は、怨念に塗れて、妖怪になった。
「おい・・・。変な事、書くなよ」
音羽が宙から、顔を出した。
さて、僕は、君の出生の秘密を知ってしまった。
君は、僕の出生を知っているのかな。
〜それは、人に憑く〜邪神備忘録に続く
その存在は、妖精などではなく。 蘇 陶華 @sotouka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます