Fairy Tale

玄栖佳純

第1話 出会い

 小学5年生の夏休み。

 家族旅行でカナダに行って、友達への土産をショッピングモールで探していました。「カナダ行ってきます!」とクラスで自慢してしまったので、たくさん買わなければいけませんでした。たまにお調子に乗って、こういうことになります。


 少ないお小遣いで買わなければなりません。できるだけ安い物を探しました。ただ、安いとそれなりで、「素敵」と思うと高かったです。


 でも、そのショッピングモールには夢のような物があふれていました。綺麗な音のオルゴール、ガラス細工の白鳥、カラフルな綿菓子、身体に悪そうな色のお菓子、信じられない大きさのコークとポテト。本当にバケツサイズでした。


 いちばん大きなサイズを選ぶとバケツですが、Sサイズなら普通でした。私はSサイズの紅茶を注文していましたが、カナダの方はふつうにバケツサイズを注文していました。

 はじめての異国の地は驚くことばかりで、すべてがキラキラしていました。


 その場所でカードを見つけました。クリスマスなどに送る封筒つきのカードです。

 とっても可愛らしい妖精さんのイラストが描かれていました。

 それが棚にたくさん飾ってあります。


 日本にはカードを送る習慣がありませんが、カナダではあるらしく、けっこうな量でした。日本のカードは立体だったりしますが、イラストが描かれただけのシンプルなデザイン。


 そのイラストに惚れました。

 豊かな緑の中で、透明な羽の生えた愛らしい妖精さんたちが楽しそうに描かれています。


 お土産などそっちのけで、自分用に4枚だけカードを買いました。当時、円にすると400円くらいしたので、人数分買うと破産でした。だから自分の分だけ。それを厳選しました。


 特に気に入ったのは柳の妖精さんです。柳の枝を掴んだ緑の服を着た少女の背中には、優しい羽がありました。


 私の中の妖精さんはこれです。

 草花の中に草花と同じ色の服を着て小さな子供が隠れていて、その背中に半透明の羽が生えています。それはそれは愛らしい姿で小さな自然の中に居ます。


 澄んだ音のオルゴール。ガラス細工でキラキラしていて、小さいけれど素敵なショッピングモールは、その存在だけでファンタジーでした。夢の中のメリーゴーラウンドです。近くに遊園地もあって、異世界ファンタジーに紛れ込んだような気分になれました。


 私にとって妖精は、そんなキラキラ、ピカピカ、ファンタジーな生き物です。

 そのイラストはシシリー・メアリー・バーカーさんに描かれたと知ったのはつい最近で、妖精といえば、コレなイラストです。


 キャラメルのオマケにも使われていたイラストらしく、もしかすると日本人の妖精のイメージはこのイラストからだったのかもしれません。そんな記事をどこかで読んだ気がします。


 ちなみにお土産は1カナダドルの記念コインにしました。

 それでも円が弱い頃だったので200円くらいだったような気がします。記憶があいまいだし細かくしらべる元気がありません。


 女子だけにあげたので男子からモンクが出ました。今ならお菓子くらいで全員にあげれば良かったのではと思うのですが、男子の方が数が多かったので買えませんでした。


 でも、元をただせば担任の先生が自分の海外旅行を自慢したくて、私をダシにしたのです。自分の自慢ついでに私のことも発表してくれました。今なら大問題だったのかもしれませんが、私はちょっぴり嬉しかったです。

 みんなから文句を言われたりと迷惑と言えば迷惑でしたが、ちょっとだけ優越感にも浸れました。


 先生はヨーロッパに行って、全員にしおりのお土産をくれました。

 紙のしおりではなくて、皮のしおりだったと思います。


 生徒からの評判はイマイチでした。本に挟むにはちょっと厚くて使いづらそうで地味でした。でも今考えると、素敵なお土産だったのではないかと。勉強にも関係があるしおりで、奇妙ですが異国情緒もありました。

 大好きな担任の先生が一所懸命に考えてくれたお土産でした。


 それを仲良しなクラスメートで持てたのです。

 素敵な思い出です。


 まだ持っている人、何人くらいいるのでしょうか?


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