ホワイトデーの魔法はありますか?
影山京夜
もしかしたらこの気持ちが叶ったりはしないだろうか?
僕、風祭京平(かざまつりきょうへい)は今まではバレンタインデーなんてものは存在はしているだけで自分には関係なんて無いものなんだと半ば諦めていた。
・・・・・・・
先月まではだが。
何故先月までかと言うならば嫌、言わせてもらうならば僕は初めてチョコを貰うことができたのだから。
貰った相手は会社の先輩の猫屋紬(ねやつむぎ)先輩だ。
貰ったチョコは少し高級なブランドの詰め合わせのセットと余り物らしいが形とラッピングがしっかりとされていて良く作られているチョコのだった。
少し高級なチョコは確実に脈なしで部署の人全員に配っているらしかった。
だが、余り物?らしいが形の良く凝ったデザインのチョコは僕だけに入っていたらしい。
僕がチョコを今まで貰ったことがないからなのかは分からないけども後者は期待をしてもいいと思うのは自分勝手だろうか。
もしくは本当に余りものなのだろうか。
本当に余りものだと考えると少し高級そうなチョコも紬先輩が自分で作ってみんなに配っていることになる訳になる。
だからと言っても流石に聞く勇気はないんですけど。
まあそんな感じで人生初のチョコを貰った僕は舞い上がっていてすっかりお返しのホワイトデーというものがあることを4月7日まで忘れていた。
色々なお返しを調べたらマドレーヌが良さそうな気がしたのでこれにすることにした。
仲良くなりたい、特別な関係を築きたいという意味らしいので先輩のことは恋愛的にも好きなのでまあどちらにとられてもいいこれがいいと思った。
あわよくば後者の方だと思われたら尚嬉しくはあるけど。
でも後者と思われた場合にどう思われるのだろうかという不安もあるのだけども。
ピロン。
ん?何か通知が鳴った。
携帯の画面ロックを解いて開いてみる。
もしチョコを貰えた時用にバレンタイン前に応募をした3月15日に限定グッズがある遊園地に同僚の男達で寂しい会として行こうってことで予約したペアチケットが当たった通知だった。
どうしようマドレーヌ作るのはいいとしても遊園地に関しては一応同僚の皆がチョコをもらっているため当たっても誰か知り合いに譲ろうということになっていた。
だけど当たってしまったのである。
マドレーヌを渡すのがホワイトデ当日に紬先輩にペアチケットも渡すのはハードルが高過ぎる。
ペアチケットは渡さなければいけないということはないけど。
でも付き合いたいとも思っているので紬先輩に両方渡す以外選択肢はないように思えた。
マドレーヌは何故市販じゃないかと言えばやっぱり手作りの方が気持ちが入るのと本気を伝えたいと思ったからだ。
まあ本当は手作りなのはお菓子作りをたまにするから材料、器具があるからなのだけど。
チケットはあんまり大きくない為マドレーヌの箱と一緒に入れることが出来たのは幸いだったと思う。
まあそんなこんなで気がついたら3月14日になっていた。
18時を告げる鐘の音が鳴った。
もうそんな時間なのか。
気がついたら結構経ってたのか。
「紬先輩ー!!!」
「ん?どうしたの京平君ー」
「もし良ければ夕食一緒にたべません?」
「私で良ければいいよー」
「本当ですか?なら僕の家で飲みませんか?」
「いいねー久しぶり君の料理を食べたかったんだよー」
「本当ですかーやった!」
「喜び過ぎでしょそんなに喜ぶとは」
「何がいいですか。」
「んー何にしようかな~、君の料理美味しいから悩んじゃうねー」
「何がいいとかあります?」
「うーんならまあすき焼きでもしますか?」
「いい案だねそれ採用でー」
「丁度余ってるんでなら決定ですね。」
そうこうしているといつの間にかマンションの部屋の前に。
「今開けますね。どうぞー」
「じゃあ具材切ってきますね。炬燵いれたんで暖まっててください。」
「家にお邪魔させてもらうんだから手伝うよー」
「嫌、万一にもケガさせる訳にもいかないんでやります。」
「なら鍋、卵等用意するねー。」
「頼みますね」
「準備できたから待ってるよー。」
「嫌、早いですね。何度も来ては居るとはいえ」
「まあ10回以上京平君の家に来てたらねー。」
「あーそんなに来てるんでしたっけ。」
「まあこれだけ回数来てたら自然と覚えちゃうよねー。」
「まあ可笑しくはないですからね」
「嫌ーまだ少し寒いから歩かなくていいから助かるよー。」
「本当にもう少し暖まるといいんですけどね。」
「本当そうだよー。」
「アベベババルベバー」
「変な声ーそんな声だすんだね京平君。」
「嫌、何するんですか。」
急に後ろから両手を顔にくっつけられたらこんな声も出て可笑しくはないでしょうよ。
何で自然な感じを装ってやってくるんですかね?。
「驚かない方が無理ありそうですけどねってもう居ないですし」
「えー何?何か言ったー。」
「切れたんで持ってきますね。」
「じゃあ火をつけますね。」
「ありがとうタスカルー」
※
「火が通ってきましたね。器貸してください」
「じゃあよろしくねー京平君。」
「そうです・・・・・・ね」
もう少しで顔が当たりそうでキョドってしまった。
距離感がやっぱり紬先輩近いな。
僕だけにならばどれ程良いだろうか。
「美味しかった!ありがとー。」
「いえいえ口に合ったみたいでなによりです」
「嫌ー、料理適当なのしか作らないからたまに京平君の家で食べるものはあいつもありがたいよー」
「まあいつもそんなに凝ったものでもない気がしますがね。」
「京平君の家に来るときの食事は私だと作らないものばかりだから全然気にしなくていいのにー」
「自分一人だけだとすき焼きとかはあんまり作らないですよ」
「私はコンビニが多いからしっかり作ってるだけいいとおもうよー」
「そうですかね。」
「そうだよー」
※
「気がついたら23時ですけど今日は泊まります?」
「うーんどうしょうかなー。」
「あの紬先輩今日って何の日か覚えてます?」
「ホワイトデーだねー。」
「そうです。なのでこれを。」
「お洒落な箱だね開けてもいいー?」
「どうぞ」
「マドレーヌだ器用だね嬉しいーどんな意味だったかなー?」
「たまにお菓子作るんでそこまで難しくは感じなかったですし、紬先輩でも作れると思いますよ。」
「お菓子作ることに関しては困ったら聞くよー。さらっと意味についてスルーしようとしてないかな?」
「嫌、そんなことはないですよ」
「調べよっかなー」
「別いいですよ」
出来れば調べないで欲しいとは思わないでもないけど反応は気になる。
「えっとマドレー・・・・・・」
「本当に調べるつもりですか」
「携帯を押さえてどうしたの?」
「嫌、特には」
調べたらたら流石にまずい気がする。
「なら調べてもいいよねー。」
「嫌、それはちょっと」
「何か調べられたら困ることでもあるの?」
「嫌、そんなことはないんですけど。」
「なら離して欲しいなー」
「嫌、それはちょっとー。」
「危ないから離して欲しいなー」
ガタッ
「あ!」
ヤバい覆い被さるような体制になってしまった。
「あはは。」
無言が3分程続いた。
「す、すいません。」
押し倒した状態では居られないのでさっき座っていた場所まで戻った。
「私の方こそごめん。」
「いえ、紬先輩は悪くないです」
「力も強かったし京平君もやっぱり男性なんだなー」
「え、何か言いました?」
「嫌、特に何もないよー。」
そうは言うが一瞬見えた耳が赤いような気がしたのは気のせいなのだろうか?
「えっとー・・・・・・他にも箱に入ってまして。」
「これって有名遊園地のチケット?だけどー。」
「嫌ーチョコ貰えなかったら男友達と寂しく行くか~って冗談半分だったら当たっちゃいましてー。」
「ってことはペアチケットってことだよねー」
「そう・・・・・・ですね」
もしかしたらとは思うけど流石にな気が。
※
「私で良ければいいよー。」
え、今なんて言われた?
「OKってことですか?」
「別に京平君なら悪い気はしないかな」
「えっとこれ明日の午前中のチケットなんですけどいいんですか?」
「あーそーなんだ別にいいよ。なら今日は泊まらせてもらえるかなー?」
時計を見ると24時が過ぎていてすでに終電はなくなっていた。
「わ、分かりましたすいませんわざとじゃなくてもこんな時間まで引き留めて。」
「別に大丈夫だよー京平家が心地良くていただけだから。」
「なら布団持ってきますね」
「ありがとうー」
「じゃあ置きますね。」
「ありがとうー。じゃあ明日よろしくねー」
そう言いながら紬先輩は来客用布団入った。
え・・・・・・決まってしまった。
緊張してきた。どうしよう寝られるだろうか。
デートってことになるわけだよね?。
嘘だったりはしないよね?。
明日・・・・・・。
明日かー。
流石に寝るかー・・・・・・。
ホワイトデーの魔法はありますか? 影山京夜 @kageyamakyoya831
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