第一章 波の声
少しばかり嫌になってきたこの生活。
朝起きて、学校に行って、家に帰って寝る、何となく送っているこの生活に飽き飽きしていた。
高校はもっとキラキラしてるところだと勝手に思ってきたけど、そんな事なかった。
学校では人並みに楽しんでいる、フリをしている。
今日もボーっとしながら過ごしていた。
ガラガラと音を立てて先生が教室の中に入ってきた。
「はーい、みんな。今日は転校生が来てるぞー」
この先生の一言でクラス中が、騒ぎ始めた。
心底どうでもいい。
でも、俺も騒いでおこうと、後ろの席の友達と談笑することにした。
「天野 康介と言います。よろしくお願いします。」
礼儀正しく聞こえた声だが、元気いっぱいということが溢れ出ているような声だった。
ザワザワとした声も落ち着き、そろそろ前を向こうと思い体を回した。
「あっ、」
と少し声が漏れてしまった。
声が漏れてしまったのには恐らく1つ理由がある。
それはかつての俺の幼なじみだったからだ。
俺は中学校に入る前、神奈川から静岡へ引っ越していた。
懐かしさで声が漏れてしまったのではないかと思う。
どこの席に座るんだろうと思い、周りを見渡してみた。
すると1つ空席を見つけた。俺の隣だ。
「それじゃあ保宮の隣なー」
その声で俺の隣へ来る康介。
ワクワクしている自分と、気まずいなと思う2人の自分がいた。
「初めまして。君は保宮何君?」
え、もしかして覚えていないのか?俺の事。
少し複雑な心境になった。
仲良くなってから言おうか、今言おうか悩みどころだった。
「俺は保宮 侑李。」
「よろしくね。侑李君。」
「君は康介?だよね?」
「そうだよ、名前覚えてくれて嬉しいな。仲良くしてね?」
「あぁ、もちろん。」
この会話の中で、カミングアウトをするのはキツいと判断したからもうちょっと話す機会があったら言おうかな。
今日の夕陽はいつもより綺麗に見えた。
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