中編
毎日狙ったかのように、定時間際にデータ入力や書類チェックを頼んでくる上司をどうにか振り切り、ものすごく久しぶりに定時退社を決める。明日の仕事量と上司の機嫌が怖いけれど、今日だけは許されたい。
普段は帰宅ラッシュの満員電車で帰るのを、今日は走って帰る。駅構内での移動時間や電車の待ち時間が勿体ない。
全速力で走り続けるなんて何年振りだろう。
体重自体は学生時代と変わってないのに、身体がやけに重い。
ぜえぜえを通り越し、ヒューヒュー息を吐き、手摺につかまってアパートの階段を上がる。動きが完全にお年寄り……、もしかしたら、お年寄りの方が私より元気に動いたりして。
部屋の扉前に到着するまでには呼吸を整え、そーっと、しずかーに鍵を開ける。音もなく扉を開け、靴を脱ぎ、電気のスイッチを点ける。部屋が明るくなるのと同時に、視線は窓のエアコンの真下。折りたたみ式の物干し台へ──
一枚のぱんつが、そろり、そろそろ。
物干し台の棒から、ぎこちなく床へ向かっていた。
むちゃくちゃ目を凝らしてみると、ぱんつの下から足が二本生えている。
い た 。
本 当 に い た よ。
「くぉぉおらああぁ!!!!」
ご近所迷惑なんておかまいなしで、わたしは通勤バッグを二本足ぱんつ目掛けて投げつけた。
バッグは見事命中。ついでに物干し台が凄まじい音立てて倒れた。洗濯やり直しだな、これは。
二本足ぱんつは物干し台の下敷きは免れたものの、ふっ飛ばされた弾みで近くに倒れていた。ぱんつからはみ出た足の長さ大きさから、ジルバニアファミリーの人形くらいの全長か。
いざ、ぱんつの妖精の正体を暴くべく、ぱんつを指先でつまみ……、一瞬のためらいが生まれる。
いかにも変態そうなキモいのだったらどうしよう……って、ダメダメ。
その時はぱんつごと包んでゴミ箱にポイしよう。
勇気を振り絞って(?)ぱんつをめくりあげる。
ぱんつの下から現れたのは──
シルクっぽい生地のフリルふんだんな薄いシャツ、黒いベルベットっぽいぴったぴたのパンツ(ズボンの方ね!姿の王子様系金髪イケメンだった。
※二話じゃ終わらなかった……。
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