【KAC202503】ぱんつの妖精

青月クロエ

前編

(1)


 家の中から物がなくなるのは妖精の仕業だって言う。でも、何でもかんでも持っていくわけじゃない。妖精にだって持っていく物の好みがあるんだと思う。


 例えば、靴下が好きな妖精。

 必ず片方しか持っていかない。片方だけで満足するのかもしれない。

 ヘアゴムやアメピンが好きな妖精もいる。

 実はオシャレに目覚めて髪を伸ばしているのかもしれない。

 他には小銭を持っていく妖精。

 妖精にもお金にがめついのがいるのかもしれない。


 ちなみに、わたしの部屋に住み着く妖精はどれでもない。うちのは、その……


 どうも、ぱんつを持っていく妖精みたい。


 部屋干しで乾いた洗濯物をたたむ時、時々ぱんつがなくなっていることに気づいてしまった。洗濯機の中始め、部屋中の思い当たる場所から、まさかそんなとこにはないでしょって場所までくまなく探しても全然見つからなくて。それも一度や二度じゃない。


 たかがぱんつ、されどばんつ。

 特別高い値段でもなく、デザインが凝ってる訳でもなく。至って普通の綿ポリ混合、申し訳程度にちょろっとレースがついた(何回か洗ったらすぐヨレる)無地のぱんつ。

 買い足しても買い足しても、いつの間にか一枚、二枚って減っていく一方。

 地味に出費が嵩むし、本当に困る。


 だから、わたしは決意した。

 ぱんつの妖精の尻尾を必ず掴んでやるんだってね!






(2)



 まずは妖精の出没時間を予測しよう。


 わたしが仕事から一人暮らしのアパートに帰ってくるのは大体夜の二十時から二十二時。

 帰ってすぐにやることがお風呂の湯を張ってる間に、部屋干しの洗濯をたたむこと。


 この時にぱんつが消えていることに気づく。

 休日に一日家でごろごろしてる時にはぱんつが消えたことは一度もないから、平日の仕事に行ってる時を狙って持っていくのかもしれない。(意外と確信犯?)


 つまり、いつもより早く帰ることができれば。


 ぱんつの妖精と接触できるかもしれない。





※一話完結の筈が二話完結になりそうです……。


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