一時帰還
~星霊殿~
《報告を終える》
ヴァニラ「はぁ、基地で報告した方が楽だというのに……」
「ああそうだ、お前たちが出かけている間に用意したものがある」
《手のひらサイズの扉を渡される》
スピカ「これは?」
ヴァニラ「見てのとおり、『扉』だ。魔法を閉じ込めた道具」
「然るべき場所で使えば、かけられた魔法が解放されるはずだ。その魔法だが……」
「簡単に言えば、その扉から行き先を指定することでそこへ一瞬で移動できる。ただし、魔法陣で座標を設定する必要がある」
ライラック「何だかすごそうね……」
シャウラ「座標の設定っていうのはどうやるの?難しそうだけど」
ヴァニラ「大地を肉体とすれば、血液のような魔力の流れが存在する。地脈と呼ばれるものだ」
「それらは地中の根のように大地のあらゆる場所に張り巡らされている。その存在を察知することは難しいが……」
「これは地脈の根の上でのみ行える術だ。扉を置けそうな広場を見つけたら手当り次第試してみるしかないな」
シャウラ「じゃあ、この……例えば、樹海とかでも。扉を出してみて、魔法陣を描けたなら、そこへはどこからでも移動できるのね」
ヴァニラ「ああ。場所を指定して、扉を開く」
ライラック「上手く噛み合ってくれるといいわね」
ヴァニラ「今は術式が発動していないが、十分な広さがある場所に置けば扉が人の入れる大きさになる。その先は指定した座標地点ということだ」
スピカ「すごい、こんなものが作れるなんて」
ヴァニラ「元々拾い物だった。それを使えるようにしただけだ」
「恐らく、いわゆる虚ろの世界を経由して移動している。距離は無限大にも0にもなるわけだ。古い魔術だが、相当な術者が作ったものだろう」
ライラック「へえ……。高度に発達していた古代文明ってやつかしら」
ローシェンナ「定期的に流行るよね、そういう話」
シャウラ「それで肝心の使い方だけど、具体的にはどうするの?」
ヴァニラ「……見た方が早い」
《ヴァニラは扉を指さす》
ヴァニラ「倉庫へ」
《言葉に答えるように、一際眩しい輝きが一瞬だけ放たれた》
《すると、石の下の床に魔法陣が現れる》
ヴァニラ「その上へ扉を置いて、離れろ」
《指示通りに行うと、扉は手のひらサイズから人が入れるほどの大きさに》
スピカ「わあ」
ヴァニラ「学院内の地脈を辿り、部屋を見繕った。そこへ、ミストに言って倉庫を用意させた。代わりの条件は提示されたが」
《扉を開くと、倉庫のような場所》
ヴァニラ「樹海から持ち帰るものも多いだろう。何に使えるかわからない、ここに保管しておけ」
ライラック「あら、とても助かるわ」
ローシェンナ「ここって、薬品庫の隣の空き部屋ですか?ミスト先生はラッキーですね」
スピカ「よく知ってるね……」
ヴァニラ「わかっていると思うが、狭いところで扉は使えない。あとは使ったら扉も回収すること。魔力で命じれば元の大きさに戻る」
「最後に。ミストのところに顔を出してやれ。それが示された条件だ」
ローシェンナ「あっ、やっぱり待たれてましたね……」
ライラック「ふふっ、集めた素材を見せてあげましょうか」
ヴァニラ「以上だ。木をどうにかする方法を考えておく」
ローシェンナ「あ、お、お願いします!」
《ヴァニラ、去る》
~薬品庫~
ミスト「あら小さな探検隊、待っていました」
ライラック「お土産なら持ってきたわ、絶対欲しがると思って」
ミスト「よくできた生徒で感心感心、見返りはもちろん、探索に役立つ薬を調合します」
「素材を見せてもらえれば、作れそうな薬を考えられるわ」
「あら、これは……種ね。アザレに育ててもらうのもアリでしょう」
ローシェンナ「そっか。今度頼んでみよう!」
シャウラ「いいわね、私たちが育てても問題起こりそうだし……」
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