学校の妖精さん(KAC20253)

黒墨須藤

妖精さんのイタズラ

 「ねぇ知ってる?」

 「知ってるって何が?」

 「ウチの学校にも、七不思議があるんだって」

 「七不思議~?」


 「お前も大概、オカルト好きだな」

 「それで?」

 「うん?」

 「その七不思議ってのは?」

 「ウチには二宮金次郎もベートーヴェンもないけど」

 「えっと……夜中にトイレですすり泣く霊に、深夜に鳴り響くピアノ。血が滴り落ちる階段と、開かずの間。消えた生徒に、動く人体模型」

 「なんか……無難な上、言い訳付きそうなの揃えてきた感じだな」

 

 「妖精さん」

 「あん?」

 「それから妖精さん」

 「……急にホラーからファンタジーになったな?」

 「一説によれば、七不思議は全部妖精さんのいたずらって話もあるんだよ」

 「へー……。で?」

 「で?」

 「トリの降臨」

 「いや、終わりかい」

 「確かめに行かないの?」

 「行かねーよ、面倒くせえ。第一、夜中だ深夜だなんて確かめられないだろ」

 「裏番のくせに」 

 「怖いの?」

 「誰が裏番だよ。それにこういうのは特番でやるもんだ、ってな」


 「分かった、分かったよ!」


 「うーん、流石に七不思議の検証のために、深夜学校に入りたいというのは、許可出来ないわね」

 「そらみろ」

 「あ、そしたら『妖精さん』に聞くのはどうかしら」

 「……あ?」


 「あーなるほどねぇ、七不思議ねぇ。そんな噂になってたのかい」

 「……『妖精さん』って」

 「ええ、ええ。用務整備のおじさんですけどもね」

 「くだらねー! ほんとくだらねー!」

 「落ち着いて! さっきのギャグと同レベルだから!」


 「昔ね、昔。地味ぃな子がいたんですけれども。それがちょっと、いわゆるいじめを受けていましてね。家庭の事情もあって、誰にも相談も出来なくて。帰ってもどうしようもないものですから、遅くまでトイレで泣いていたんですね。それでも、もう遅いから、帰ろうとして、階段で転んでしまったんですね。どこかを切ってしまったのか、痛い痛いと。その声を聞いて、慌てて駆けつけて……。ピアノが好きな子でね。落ち着けるなら、好きなだけ弾いていて良い、鍵もかけておくからねって」


 「お話ありがとうございました」

 「二人共、仲良くね」


 「ああ、それにしても不思議だ」

 「あの子のきれいな体はここにあるのに。誰にも見られていないのに」

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学校の妖精さん(KAC20253) 黒墨須藤 @kurosumisuto

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