魔法の才能ゼロだった俺、1日16時間の努力を8年続けたらいつの間にか最強になったので真の強者として暗躍したいと思います
冷凍ピザ
第一章
第1話 最強の原点
このときの俺はまだ7歳、無邪気に家の庭で遊んでいたときの出来事だった。
「ラクス、ここに魔物の大群がやって来る! 早く逃げるぞ!」
向こうから年の離れた兄、ユリウス・ハーミットがそう叫びながら必死の形相でこちらへ走って来ていた。
そして兄の後ろ、奥の方へ目をやると、そこには巨大なゴブリンの群れがこちらへ迫ってくるのが見えた。
「急げ! 殺されるぞ!」
兄にそう叫ばれたが、幼い俺は自分の何十倍もある巨大な魔物たちを見てしまった恐怖で体が動かなかった。
「あ……」
次の瞬間には、そのゴブリンの群れが俺たちのすぐそばまで迫っていた。
咄嗟に兄の言うことには反応できなかったくせに、この瞬間だけは頭が冴えていて、すぐに理解できた。
俺はここで死ぬんだ、と。
しかし──。
「ギィアアアアアアッ!?」
突如、黒ずくめの魔導師が俺たちと魔物の間に割って入り、魔物の群れを一瞬で焼き払った。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
彼は腰を抜かした俺たちに続けて言う。
「魔物は絶対に通さん。君たちは早く逃げろ」
その言葉に、俺は思わず感動した。
強い人間はこれほどに美しく、輝いて見えるんだ。
その瞬間、この人こそが真の強者なのだと頭ではなく本能で理解した。
──この出来事が、俺の原点となった。
この一件以降、俺は黒ずくめの魔導師のようになるため、必死に努力を続けた。
まずは魔力の効率を上げるために自分の体に宿る魔力を操作する練習を、睡眠中以外の16時間毎日続けた。
それは他の作業に言い換えるとすると、脳内で数式を暗算し続ける、だとか、そのようなものと考えてもらっていい。
基礎的な魔力量は変えられないから人並みの魔力量な俺はそこをカバーするために機械のような精密さを求め続けた。
もちろん基礎的な体作りも欠かさない。筋トレは正直辛いけど、四六時中魔力を練り続けることよりはよっぽど楽に感じられた。
そしていくら精密に魔力を操作できるようになっても魔法が使えなければあまり意味が無い。
だから次は両親に魔法の指南書をねだった。俺はそれを取り憑かれたかのように読み、その書籍の文章全てを暗記するほどに読み尽くした。
後は身につけた精密な魔力操作技術と魔法の知識を活かして魔法の実践も徐々に行っていった。
***
「よし、そろそろかな」
俺がこの異常な習慣を続けて3年、俺は10歳になった。
家族が全員寝静まった頃に部屋の窓をそっと開けた。
そこから靴を持ってできるだけ音を立てぬよう慎重に飛び降り、家から脱走した。
「よし、近くの魔物が発生する森まで飛んでみよっか」
まあ近くって言っても家から5キロくらい離れてるけど。
「ふぅー、はっ!」
深く息を吐くのと同時に魔力を全身に巡らせて体の性能を引き上げる身体強化と風属性魔法を同時に発動。
地面が割れない程度に踏み込み、超高速で空へと飛び立った。
そして空中に飛び上がってから、魔力をクラスター爆弾のように爆発させてさらに加速をつけた。
うんうん、この風を切る感覚、やっぱり素晴らしいね。
ちなみにこの移動法は俺独自に編み出したもので、かなり快適だから気に入っている。
1分弱の時間をかけて森まで到着し、俺はそこへ地面を割らない程度に勢いよく飛び降りた。
「さて、近くに魔物はっと」
辺りを見回すと水色のスライムが一匹、こちらへ向かって来ていた。
「あー、もうスライムはいいよ」
飛びかかってきたスライムは片手で掴んで、火属性魔法で容赦なく焼却した。
ちなみに俺は現存する火、水、風、土、光、闇の全属性が使える。
指南書のおかげだね。あれは全魔導師志望の人間が読むべきだと思う。
「もっと手応えのある魔物はいないかな……お、足音だ」
俺は足音のする方へ風属性魔法で飛行して向かった。
「おお、でっかいゴブリンか。あの日を思い出すね」
「グオオオオオオオッ!」
俺をターゲットにした俺の何倍もの巨体をしたゴブリンは握ったその拳をこちらへ振り下ろした。
「うん、少しはあの人に近づけたかな」
俺の手に握られた赤紫に光る剣はゴブリンの胴体に美しい断面を残して両断していた。
一方、ゴブリンは自分が斬られたことにすら気づかず絶命し、その場に崩れ落ちた。
「でも、まだまだ満足するつもりはないよ」
──そう、これも、これまでの努力も全て。
「"真の強者"へ至るためなのだから」
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