カルチャーギャップ

赤城ハル

カルチャーギャップ

「ねえねえ、海外の子に『妖精フェアリー』って言われた。これって可愛いって意味だよね?」

 普段ゲームをしない姉が流行ってるからやってみたいということで、俺は隣であれこれ教えた。

 ゲームは巨大モンスターを狩るという携帯ゲーム。

 オンラインで世界中のプレイヤーと協力プレイすることも可能。

 そのゲームで歓楽街エリアで遊んでいた姉が海外のプレイヤーから吹き出しで『妖精』とコメントされた。

「向こうでは『妖精』って、いたずら好きという意味があるから、そっちじゃない?」

「なんで? 妖精って可愛い生き物でしょ?」

「日本だと某有名なアニメ映画のせいで金色の羽を生やして、レオタードを着た可愛い小人ってイメージだけど、本場ではいたずら好きの悪いやつだから。赤ん坊をすり替えるチェンジリングの話とか有名」

「でも私、別にいたずらなんてしてないよ!」

 姉が頬を膨らませて抗議する。

「ん〜、それなら日本人だからかな?」

「どういうこと? なんで日本人だと妖精なの?」

「ヨーロッパからしたら日本の文化は異世界文化みたいなんだってさ。刺身や卵かけご飯って生じゃん」

「向こうは生とか食べなかった?」

「レアはあるけど生はないよ。あと余談だけどワカメ食べないよ。ワカメを食べるやつは宇宙人だと言ってるくらいだしね」

「それは聞いたことある。あとマツタケもだよね。向こうは靴の匂いとか言って嫌ってるよね」

「納豆も苦手だね」

「でもそれってさ、食文化違いでしょ? それだけで別もの扱い? 酷くない?」

「他にも家では土足禁止。細かい作業が得意で折り紙やジオラマが上手。特にジオラマは戦後にGHQが映画のフィルムを見たら、真珠湾攻撃の録画記録って勘違いしたほどだしね」

「へえー」

「ま、そういうわけで日本人を『妖精』って言うんだよ」

「でも私は可愛いという意味で受け取っておくわ」

 そして姉はまたゲームへと興じる。

「あとはもう理解したから俺はいいよね?」

「ありがとね」

 部屋を出て、あとは姉一人でゲームをさせる。


  ◯


 しばらくして姉が部屋を出てきた。

「どう? 慣れた?」

「……まあ、慣れたかな? それにしても疲れたわー」

 姉が自身の肩を揉む。そしてソファに座る。

「そういえば『妖精フェアリー』から『ピクシー』になったけど、ピンク色だから? それで可愛いってこと?」

 とある世界的人気ゲームソフトでピンク色のモンスターがいる。

「いや、悪い意味じゃない?」

 姉がメイキングしたアバターはそれほどピンク色でもないし、小さくて丸くもない。

 なら悪い意味だろう。

「えー!? 私、なんかした?」

「喚いたり、ちょこまかしたり、勝手なことしたんじゃない?」

「ん〜……初心者だからね〜」

「……やったのかよ」

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カルチャーギャップ 赤城ハル @akagi-haru

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