第12話 全身くすぐり攻撃

「いっそ、やるなら、やればいいじゃない…!」


そう言って、まだ瞳に鋭い月光を宿すルナガールに、ティックルンは感心しながらニヤッと笑った。


「…早くくすぐってくださいってことかな?じゃあ、喜んで」


パチン。


一斉に、無数の羽根がルナガールへ群がった。


「ひぎいいっひひひひひぃ!」


夜空に叫ぶような笑い声が響き渡った。


無防備な脇の下を羽根の先が何本も責め立てる。

一本でこしょこしょとくすぐられるだけで苦しかったのに、埋め尽くすほどの羽根にサワサワ、ほじほじ、こちょこちょと責められ気が狂いそうになる。


「ふああああっはははっ!」


肋骨の溝を無数の羽根がこそこそと這い回り、横腹をふわふわとした羽根が優しく撫で回す。


「くひひひひいっ!」


おへその周りには小さな羽根が集まって、無数の細い指でこちょこちょとくすぐられているように錯覚してしまう。

おへその中まで羽根が入り込んでくりくりとほじくられると電流が流れるようなくすぐったさで体が震える。


「ひぃんっ、いやっははははああ!」


足の裏は強烈だった。

全身のどこよりも多い数の細い触手が殺到し、小指ほどの小さな羽根先がルナガールの足をびっしり埋め尽くして、それぞれがこしょこしょと蠢く。


足の甲、指の隙間、くるぶしの凹んだ所、土踏まずのシワの一本一本。

どこまでも丁寧に、逃すことなく責め立てる。


「ぎゃああっははは!あああ!あはっはははは!」


対して、背中や太ももの責めは触れるか触れないかのソフトで緩慢な動きだった。

お尻の付け根の骨から、先が少し尖った羽根が一本、すうーっと首の付け根まで背骨を撫で上げていく。


「ひああああんっ!」


太ももの内側からお尻の付け根、膝の裏や際どい境界線まで、何十本もの触手が怪しく責め立てる。


膝の裏を細かくこちょこちょと無数の羽根がくすぐり、

内ももからお尻の付け根まで大きな羽根が焦らすように撫で上げる。


細かく振動する羽根は下腹部や境界線に集まって、体の奥底まで、言いようのない狂おしいほどの刺激を注ぎ込まれ、流されてしまいそうになる。


もどかしいくすぐったさに脳を溶かされるような快楽が加わって、全てが混ざり合い、ルナガールを悩ませた。


「もっ!いひひいははは!やめてっ!あひいっっひひひいい!」


ありとあらゆるくすぐったさを全身に受けて泣きながら笑い叫ぶ彼女にスッとティックルンが近づいた。


「そうだなあ、ティックルン様、負けました、あなたのくすぐり奴隷になりますぅ~っと可愛~くお願いできたら、考えてあげないこともないかなあ?」


ティックルンが手袋をはめた手で軽く首をくすぐると、涙をこぼしながら弱々しく睨みつける。


「くうっくっくう、ううう…!」


そんなことを受け入れられる訳がない。

必死に歯を食いしばって、ルナガールは心を奮い立たせようとする。


「言えないなら…」


全身をくすぐる羽根のスピードが一気に速くなって、ルナガールの背中がびくんっとのけぞる。


「ひやああっははは!あはっあははは!」


びくんっ、びくんと痙攣しながら狂い笑う彼女を見てティックルンはニヤニヤと指先でルナガールの体をなぞる。


「ずっとこのまま、くすぐりの刑にしてやろう」


だんだん空が明るく白み始めていた。

このままでは、広場に人が集まってきて、ルナガールは文字通り笑い者になってしまうことだろう。


「あのルナガールの、こーんな情けない姿を見たら、みんな指差してお前を笑うだろうなあ~」


「ふううくくくっ!このっ、ひっ卑怯者っ!いひひひっひいい!」


全力で暴れるルナガールを、ティックルンは両手の指で直接くすぐりだす。


「ぎひひいっ?!にゃあああはははははは!」


羽根のくすぐりとはまた違う、ぐにぐにとした指のくすぐりに、枯れたはずの喉からまだ激しく笑い声が溢れる。


「ほら、一言でも負けました、と言えば解放されるんだぞ?」


ほれほれ、と横腹をこちょこちょと指でいたぶられて、ルナガールは首をぶんぶん振った。


足も、脇も、背中も、全てを同時に羽根でくすぐられ、

横腹や腰をぐりぐりと指で責められて、

太ももや背中をいやらしく撫で上げられ、

全てのくすぐったさが全身に注ぎ込まれて、じりじりとルナガールを追い詰めていた。

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