妖精さんは見ているよ

宝月 蓮

本編

 この世界には妖精さんがいることを知っていますか?

 妖精さんの姿は人間には見えません。

 ですが、妖精さんは人間がすることを本当によく見ています。

 妖精さんは良いことをした人間にはご褒美を、悪いことをした人間には罰を与えるのです。

 そんなある日、妖精さんがある街に降り立ちました。


「この街に良い人はいるかな? 街の人間達を観察してみよう」

 

 妖精さんは街にいる人間を観察することにしました。


 妖精さんはある女の子に注目します。

 制服を着た女の子です。

 女の子は電車に乗って家に帰っています。

 すると次の駅でお腹に赤ちゃんがいる女の人が電車に乗って来ました。

 女の子はすぐに席を立ちます。


「この席にどうぞ」


 女の子はお腹に赤ちゃんがいる女の人に席を譲ったのです。


「ありがとう。助かるわ」


 女の人は嬉しそうでした。

 女の子も嬉しそうにえへへ、と笑っています。

 女の子も女の人もニコニコしています。


「あの女の子はとっても良い子だ。良い子にはご褒美をあげないと」


 妖精さんは女の子に魔法をかけました。


「ただいま!」

「お帰り。今日のおやつは何と、チョコレートだよ」


 女の子が家に帰ると、女の子のお母さんがそう言いました。

 チョコレートは女の子の大好物なのです。


「やったー! ママ、ありがとう!」


 女の子は大喜びです。


「君が良い子だからだよ」


 妖精さんは女の子に笑いかけました。


 妖精さんはまた別の場所に向かいます。

 妖精さんは次にある男の子に注目します。

 男の子は弟と遊んでいる様子です。

 その時、男の子が弟のおもちゃを取り上げました。


「お兄ちゃん、返してよー! それ僕のおもちゃ!」

「やーだね!」


 男の子は弟におもちゃを返してあげません。


「弟のおもちゃを取っちゃうなんて、あの男の子は悪い子だね。悪い子には罰を与えないといけないね」


 妖精さんは男の子に魔法をかけました。

 すると、男の子は床に落ちていた他のおもちゃにつまずいて転んでしまいました。


「痛いよー!」


 男の子は泣いています。


「悪いことはしたらいけないんだよ」


 妖精さんは男の子に対して怒っていました。


 妖精さんは人間がすることをよく見ています。

 悪いことをして妖精さんからの罰を受けないように、気を付けないといけません。

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