「この世にはいない人」と聞くと、亡くなった人か、あるいは物語の登場人物かと思うのがふつうでしょう。でも、本作の主人公があこがれている人は、そのどちらでもないのです。異様といえば異様な、でも純粋なあこがれをいだきつづける主人公に、ある日奇跡が訪れます。その奇跡を目の前にして主人公が感じたのは――。「あこがれ」というテーマにピッタリな、美しくもほろ苦く、ほろ苦くも温かい、百合色を帯びた小説です。