第5話 告白?

 明るくなる。火がなくとも歩けるようになった。

 私たちは焚き火を消してこの場からたつ準備をする。


 「これどうします?」


 視線の先にあるのは肉すら燃えて骨しか残っていないキングウルフの残骸。冒険者パーティを組んでいた時は、魔核と呼ばれる紫色の石みたいなものを回収し、ギルドに持って行っていたのだが。私たちは今冒険者ではない。魔核を持っていても使い道がない。


 「魔核回収します?」

 「うーん、回収したところで今の私たちじゃ売り払えないし。荷物になるだけだからいらないかなーって思うけど」

 「ですよね」


 認識は同じだった。


 「これからどうするんです?」

 「やることは沢山あるよ。まずギルドに行って、新たにパーティ登録をして、依頼をこなしてお金を貯めつつ、しばらく泊まれる宿を探さなきゃでしょ。それから武器やら身なりやらも整えなきゃだし――」

 「うげー、なんか大変そうですね」

 「他人事だけど、カミリアちゃんもやるんだよ?」

 「もちろんわかってますよ」

 「ほんとー?」

 「はい!」


 ニコッと微笑みあう。


 「真面目な話だけどさ」


 歩き始めて、しばらく沈黙が流れていた。ふとした瞬間に、ヴェロニカは思い出したかのように口を開く。


 「どうしました?」


 と、私は首を傾げる。


 「なんで着いてきてくれたのかなって」

 「またそれですか」

 「だって考えれば考えるほど、着いてくるメリットないなぁと思って」

 「普通はそうですね。きっと私以外は着いてこないと思いますよ」


 あのパーティに留まることと、ヴェロニカに着いていくこと。天秤で重さをはかれば、前者に傾くのは言わずもがな。わかりきったことであった、


 「じゃあなおさらなんで……ってなるんだけど」


 ずかずか私の心の中に入り込んでくる。面倒臭いなとか、うるさいなとか、ネガティブな思考がぐるぐると回る。良くない傾向だ。

 深呼吸を一つ挟んで、落ち着かせる。


 ヴェロニカと一緒に旅をするのなら、きっとこの問題は一生付き纏う。彼女はなぜ着いてきたのかと私を怪訝に思い、私は私で嘘を吐き続ける罪悪感に苛まれることになるだろう。


 じゃあ。言ってしまおうか。


 「ヴェロニカさんのことが好きだからに決まってるじゃないですか! 好きじゃなかったら! 人生棒に振る覚悟で着いてきたりなんてしませんよ」

 「……」

 「あーもー言っちゃいました。ヴェロニカさん、覚悟しててくださいね。なにがなんでもヴェロニカさん、私のこと好きにさせますから。恋させますから!」


 吹っ切れた私は彼女に宣戦布告のようなものをしたのだった。



◆◇◆◇◆◇あとがき◆◇◆◇◆◇


お付き合いありがとうございました。

異世界もの書きたいな、ラブコメ書きたいなの気持ちが入り交じった結果これになりました。楽しんでいただけたら幸いです。


また、『好きな人(超イケメン)にラブレターを書いたんだけど、知らない人(超美人)がラブレターを持ってやってきたんだが!?』という、告白相手を間違えてしまって好きじゃない女の子付き合うことになる百合ラブコメも執筆中です。ユーザーページからご覧いただけると思いますのでぜひお付き合い下さい。


改めてになりますがご覧いただきありがとうございました。またブックマーク、レビューをくださった皆様にも感謝いたします。ご期待に添えていたら嬉しいです。


またどこかで読者の皆様とお会いできること、楽しみにしております。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きな人がSランクパーティから追放されたので、私もSランクパーティをやめて好きな人に着いていくことにした 皇冃皐月 @SirokawaYasen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ