俺の配信に必ず現れるガチリスナーの正体がツンデレ幼馴染とか信じません、絶対に。

こて

プロローグ 

ピカピカ光るPCとモニター、カチャカチャ、とコントローラーの音、そして男の喋り声。


「コイツまだ倒れないの?!もう回復無いんですけど?これ初見キッツい!!」


男はモンスターを攻撃しつつ、左上にあるタイマーを確認した。

次の瞬間、モンスターは攻撃モーションを開始する。


「おっと、この攻撃は...」


初見のモンスターの攻撃、普通なら食らってもおかしくはない。

だが彼はモンスターの攻撃を見切り、カウンターする。


「んまぁ、この攻撃2回目だしね、見切れるでしょ」


モンスターがダウンして隙が生まれるが、彼は体力を回復せず攻撃。

そして、これまでの攻撃でモンスターの体力もあと僅かなのではないか、と予想した男はトドメを刺すため必殺技を放つ。

パンパカパーンと流れる音とモニターに映されるモンスターの死骸とゲームクリアという文字。


「よっしゃ!これでクリア!」


途端に、画面横に張っていたコメント欄が動き出す。

『お疲れ様!』

『ナイス〜』

『うますぎ!!』

『どーせまぐれ』

『時間かかりすぎ』

そう、彼は今までのプレイを配信していた。

彼のチャンネル【ayえーわい】は登録者5万人、今の同接は2000人を超えるYouTuberだった。


「いやぁ〜、今回むずかったね」


コントローラーを机に置き、コメント欄に目を通し視聴者と雑談を開始する。


『討伐早すぎない?wまだ誰もそいつ倒して無いよ!?』

「えまじ?他の人もう倒してるでしょ」

『最後のプレイうますぎw!!』

「ありがと〜、最後のは結構焦ったんだよね、倒せて良かった〜」

『モンスタークソ強かったもんね』

「だよねだよね?!ストーリー的にメインモンスだったけど、難易度も高くて楽しかったな〜」


プレイも上手いが、こんな風に視聴者との会話も楽しむというのが彼の配信スタイル。

ただコメントには賞賛される以外に、

『普通にPS低すぎ』

『こんなん誰でも勝てる』

『俺そいつもう倒してるし』

などのコメントも全然書き込まれる。でもそんなのに気にする必要もないので悠真自信は気にしていない、と思い込んでいるだけで実は結構気にしているのだ。

視聴者と会話をしていると、コメント欄に赤色のコメントが投下される。


「あっ!もっちーさん!赤スパありがとうございます!」


もっちーという視聴者はいつも配信を見てくれてコメントしてくれる方だ。

ちなみに赤スパというのは、YouTubeの投げ銭機能、スパチャの最高額である。金額にすると5万円という大金。


『今日の配信も楽しかったです、相変わらず上手ですね。特に最後、モンスターの動きを見切りカウンターを決めた所です。まだ2回目の攻撃モーションというのに完璧に見切っていましたね。PS高過ぎです。これからも頑張ってください!』


こんな風に、もっちーさんのコメントの内容はいつもプレイを褒めてくれたり、ストーリーの感想を書いたりしてくれる。うん、正直照れる。


「うわ〜、こんなに言ってくれるのめっちゃ嬉しいな、いつも配信見に来てくれてありがとうね」


そこからも少しコメントを読んだ彼は配信の終わりに入る。


「じゃあ今日はここまでかな、やっぱモンスターブレイカーは面白いね!」


そこまで言うとコメント欄では『もうちょっとだけ雑談して!』と流れる。


「はは、ごめんね、俺明日学校だからもう寝ないと」


デジタル時計に目を通すと時刻は既に午前2時になっていた。


「次の配信は明後日かな、多分モンブレかBqexビークックすると思う!、んじゃ今日もみんなありがとうね!おやすみ〜!」


『おやすみー』と流れるコメント欄を見て、配信を切りPCの電源を落とす。


「つかもっちーさん何者だよホント...」


いつもコメントして、今日は赤スパって...


「はぁ、疲れた」


ボフンっ、とベッドに倒れ込みスマホを開く。

メッセージアプリを開くと、一件の通知が1分前に届いていた。差出人は俺、浅瀬悠真あさせゆうまの幼馴染である望月彩花もちづきあやかからだった。


『テスト勉強してるの?』


どうやらテストについて俺に

天才と呼ばれる程の学力は自分には無いし、配信で全然勉強はできていない。


「範囲わかって無いです助けてください!!!」


『だろうと思ったわ...』


すると一枚の写真が送られる。


『今回の範囲書いてあるから』


「まじありがと!今度なんか奢るわ!!」


『はいはい、てか早く寝なさいよね』


「彩花もね、昔から身体弱いんだから」


少しの間が空き返信がくる。


『うるさい、ばーか』

『おやすみ』


「うん、おやすみ」


それから送られた写真を見る。


「今回の範囲ここまでか、結構あるな...」


範囲を確認し、スマホを閉じようとした時だった。


「ん?これって...」


彩花が送ってきた写真にはタブレットもチラッとだけ写っていたのだが、そこには見慣れた配信と、もっちーさんと一緒のアカウントアイコンがあった。


「え?なんで彩花のタブレットに俺の配信が写ってるの?は?え?」


いやまてまて、と自分を落ち着かせる。

はっきりと写っていないから、もしかすると見間違いかもしれず、確実にもっちーさんという確証はない。

もう寝ようとスマホの電源を消し、目を閉じるのだが、頭の中で様々な憶測が飛び交い結局寝れたのが朝3時だった。

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