月と星の紡ぎ手

司馬波 風太郎

第1話

「~~~……」


 一人の少女がハミングをしながら夜空を見上げている。澄んだ夜空は美しい星がはっきりと見えてとても美しかった。この光景が見れるこの場所は少女にとってお気に入りだ。


「……綺麗」


 落ちついた穏やかな声を少女が漏らす。月光に照らされてプラチナブロンドの美しい髪がきらきらと煌めく。深い青色の瞳と透き通るような白い肌はその髪色によく似合っていた。服装はとてもシンプルな物を着ているがそれが余計に少女の良さを引き立てている。


「お母さん、ルナは今日まで元気に生きてこれたよ」


 少し悲しそうな声で少女――ルナは呟く。彼女の脳裏に思い浮かぶのは幼い頃になくなった優しい母親のことだ。

 彼女は母が大好きだった、けれど彼女はあることが原因でなくなってしまう。それ以来ルナは母の姉妹である叔母フィオナの家に引き取られて育てられてきた。

 幸いにも叔母の家族はルナに優しくしてくれた、母親を亡くして可哀想だという気持ちもあったのだろうが。おかげで16歳になった今もルナは穏やかで楽しい生活を送ることが出来ている。

 ルナは母との少ないながらも暖かい思い出を思い返しながらある言葉を呟いた。


「静かな夜の帳を紡ぐ星達よ、今日もまた世界を守る光を灯し続けて」


 その言葉は無意識の内に少女の口から出てきた。母はこの言葉を星の詠と言っていた。この言葉は忘れないようにと母はよく言っていた。


「でも今だにこの言葉の意味はよく分かんないや」


 母はこの言葉がどんな意味を持つのかを教えてくれないまま、亡くなってしまったため、ルナはこの言葉がどんな意味を持つのかは知らない、それでもよく聞かされていたこの詠は母との繋がりと感じられるから少女はこの詠が好きだった。


「さてとそろそろ叔母さんが心配するから家に戻ろうかな」


 その後もしばらく星空を眺めていた少女は立ち上がり服に着いた汚れを払う。家の誰にも言わず、この場所に来てしまったため、あまり遅く戻ると叔母達に心配を駆けてしまう。

 それにルナは居候している身だ、叔母や叔父は決して無意味に怒ったりはしないし、基本的には自由にさせてくれるけれど家のこととかをきちんとやらないととても怒るのだ。


「きちんとやるべきことはやらないとね。生活させて貰ってるわけだし」


 気持ちを切り替えてルナは戻ったらやらないといけないことを頭で整理する。お気に入りの場所に来れて機嫌のいいルナは鼻歌を歌いながら村への帰路を歩んでいった。


 これはある少女達の英雄譚。一人の少女がもう1人の少女と共に憧れていた英雄になるまでの記録だ。

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