天音はるかは日向で輝きたい!
七瀬いすず
プロローグ 日本のひなた、宮崎にて
世間から日本のひなたと称されている宮崎県で、私はもう三年もブイチューバー活動をしている。
チャンネル登録者数は未だ五千人弱。盾をもらうにはまだまだ足りない。まあ、収益化はしているからまだ良いんだけど。
「はあ……、今日の配信どうしよう」
私は今、親友の
「はるか、おはよう。どうしたの? こんな早くに」
「未来、おはよう。実は、今日の配信どうしようか悩んでいて」
「最近、ゲーム実況ばかりしているよね。たまには雑談配信すれば?」
「そうしようかな。まあ、夜になるけど」
アルバイトは日中しかしておらず、勤め先は地元のスーパーマーケット。品出しやレジを主にしている。
「それじゃあ、朝ごはん準備するね。はるかは着替えてきなさい」
「うん、分かった」
チャンネル登録者数一万人を超えるには、地元以外の人達に周知される必要がある。でも、私は地元の人達にもっと知ってもらいたい。そう願いながら三年活動して、チャンネル登録者数五千人を獲得した。
それを考えると、まだまだいけるのではと思えてしまう。多分、いかに面白い動画にしていくのか、というのが今後の課題だろう。
「面白い動画か。なら、雑談で面白くしないと」
ジーンズとTシャツに着替え、リビングに戻る。アルバイトは八時から十七時までの八時間。その間、休憩が一時間十五分ある。
ブイチューバーの収益だけでは生活が厳しいからそうしているけど、実際は未来にこれ以上負担をかけたくないという気持ちが先走りしている。
未来はどうして同居しようと考えたんだろう。朝ごはんまで準備してもらっているのが何だか申し訳ない。
「はるか、座って」
「うん」
スクランブルエッグにベーコン。サラダにコーンスープ。トーストが一枚。これを準備するのにどれだけ労力がかかっているんだ。考えただけでも申し訳ない。
「どうしたの? はるか。また配信のことで悩んでいる?」
「いや、そうじゃなくて」
「じゃあ、何?」
「……未来は私と同居していて嫌になっていない?」
「なっていないよ。何だ、そんなことを考えていたの?」
「うん」
未来が微笑んでいる。嬉しいのかな。心配しているのが。
「はるか、気にする必要はないよ。だって、私がしたくてしているんだから」
「……分かった。でも、辛くなったら言ってね」
「うん!」
未来が作ったごはんはいつも美味しい。残さず食べなきゃ。
「ああ、コーンスープが沁みるなぁ」
確かにコーンスープは美味しい。サラダも野菜が新鮮だ。未来なら良いお嫁さんになるだろうな。
「はるか、考え事はあとにして。アルバイトに遅れるよ」
「うっ、うん!」
こうしちゃいられない。早く食べないと。
「ご馳走様でした。はるか、食器の後片付けお願いね」
「うん、いってらっしゃい」
未来がバックを肩に掛けて仕事に出掛けてしまった。私も急ごう。
「よし! ご馳走様でした!」
手際よく食器の後片付けをし、食器乾燥機のタイマーを回す。
「よし、軽く歯を磨いてから行こう」
手早く歯を磨き、リュックを背負って家を出た。
「いってきます」
玄関のドアに鍵をかけてから駐輪場に向かい、自転車の鍵を解錠する。
「急がなきゃ」
私はアルバイト先のスーパーマーケットに向けて自転車を走らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます