人を呪い殺した帰り道
九文里
第1話 新婚初夜に現れた者
新婚旅行を明日に控え、今夜は冬次の部屋で新婚初夜を迎えるのだ。
冬次は、人に連れて行ってもらったクラブで、隣に座ったミカ子に一目惚れをした。しかし、ゴージャスな彼女は、貧乏な冬次にとっては高嶺の花であった。それでも、頑張って何回もクラブに通い、何度もプレゼントを贈った。
決め手は、カルティエのダイヤモンドのリングだった。ダイヤに目が眩んだミカ子は冬次のプロポーズを受け入れたのだった。
シャワーの音が止んだ、バスルームの戸があく音がする、そして部屋のドアが開いて、バスタオルで体を巻いたミカ子が入ってきた。
冬次は冷静さを装いながら上半身を起こして、微笑んで歩いてくるミカ子を見た。
すると何か違和感がある。彼女の後ろに何かいる。黒く長い髪が見える。女がいた。冬次は体が固まって、一瞬にして顔の表情を失くした。
その女は、ミカ子をすり抜けて前に出てき来た。赤いワンピースを着ている。冬次の横に来ると上半身を折って顔を近づけた。長い黒髪が冬次の顔に落ちるが、その髪は片側しかない。頭が半分欠けているから。そして、目は白濁して真っ白だった。
「
冬次から声にならない声が漏れた。
「冬次君、どうしたの」
冬次の様子がおかしい。ミカ子の胸に嫌な汁が染み出てきて、不安な気持ちが充満していく。
赤いワンピースの女の両手がすっと伸びてきて、冬次の首に巻き付いた。
「おまえ…渡した金…この女に使っていた…のか」
掠れた声が耳に纏わりつく。首に回した手に力がはいり、冬次は息が出来なくなった。
「ま、待て。待ってくれ」
冬次は金縛りにかかったのか、ピクリとも体が動かせない。
「お前…の…ために…会社の金をぬすんだ…」
婚活パーティーで、ハンサムな安倉冬次と知り合い、会うようになった。冬次は会社の経営者で、マメで優しかった。
何回か会うと、会社に急な金がいるから貸して欲しいと、頼まれるようになる。良美は冬至に嫌われたくなくて、会社の金を横領して冬次に渡した。それは、何回か続き、金額も大きくなっていった。
しかし、冬次は会社経営者などではなく、ただのプー太郎で、良美から貰う金でミカ子に高価なプレゼントを贈っていたのだ。
そして、ついにばれてしまい、良美は会社から追及され、警察に告発されて、行き場所がなくなった。
冬次に助けを求めると、「お前が勝手にやったことだ。犯罪をしてまで金を作ってくれとは、頼んでない」と、突き放された。
そして「結婚するから、もう電話をしてくるな」この言葉で、一気に暗闇に引きずり込まれて、冬次を呪い会社の屋上から飛び降りたのだった。
飛び降りた後、良美が上半身を起こすと、隣に自分の死体が転がっていた。頭が割れていて、血の中に浸っている。それを見て頭が痛くなってきた。ズキンズキンと脈は無いはずなのに、脈を打つ度に痛むようだ。
そして、冬次の部屋に行かなければと思って、フラりと立ち上がったら、光の中に人影が見えた。誰と思ったら、武士だった。
「引導を渡しに来た。お前を成仏に導く」と武士は言うので、あの世に迎えに来てくれたのだなと分かった。が、「私には、やることがある」と言って、成仏する事を断った。そして、冬次の部屋に向かった。
頭が痛い、おまけに耳障りまでしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます