信長は子供達との相撲を終えると茶屋で一息吐いた。

「ふぅ~、スッキリした!」

「…信長様、ちょっと小耳に挟んだのですが、本当に武田信玄が攻めて来るんですか?」

 茶屋の店主は心配顔でお茶を差し出した。

「…なんだ?もう噂になっているのか?」

 町民の噂は早い。

 尾ひれが付いて大きくなってる場合もあるが、結構核心を付いてたりする。


「せっかく信長様が町を発展させてくれたのに、また戦火に焼けてしまっては…」

「安心しろ!

 例え信玄が上洛を目指して来ても、この信長が追い返してやる!」

 信長は拳を握り締めてみせた。

「おぉ~、さすが信長様だ

 頼りにしてますよ!」

「おう!任せとけっ!!

 ……あっちぃ!!」

 熱々のお茶で舌を火傷した。



「信長様~、信長様~」

 帰蝶は城の中で信長を探し回っていた。

「…もう、どこ行ったのかしら?」

「帰蝶様、どうしましたか?」

「恒興、信長様を見掛けませんでしたか?」

 池田恒興と出会った。

「殿ですか?…会議を飛び出してから見てませんね

 天守においででは?」

「…先程、見てきましたわ」

 帰蝶は城のほとんどを見て回っていた。

「まさか…、また?」

「えぇ、一人で町に行ったんでしょう…」

 帰蝶のこめかみがピクピクしている。

「き、帰蝶様…、殿も気晴らしが必要かと…」

「だからと言って、護衛も付けずに町に出る殿様がいますか!?」

 かなり怒っているようだ。


 そうとは知らず町から信長が戻ってきた。


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