秀吉は城に戻り信長に報告する。

「殿、長政殿に書状を届けてまいりました

 返事は後程との事です

 それと、お市様から京土産のお礼を言われました

 更にはご懐妊されているようです」

「何!?市が妊娠してるのか!?

 それはめでたい!何かお祝いを用意しないとな!」

 信長は立ち上がって喜んだ。

「殿!市の懐妊はめでたいですが、今はそれどころではありませんよ!」

 帰蝶がはしゃぎ出した信長に釘を刺した。

「めでたい事なんだから良いじゃないか?」

「何を呑気な事を言ってるんですかっ!

 うちは今、いつ攻め込まれるか分からない状況なんですよ!」

「ご、ごめんなさい…」

 帰蝶に起こられ素直に謝る信長だった。


 帰蝶は自分の部屋に戻ると信長に黙って市へお祝いを考えた。

「…やっぱり赤ちゃんには可愛い物を贈らないとね」

 出入りしている商人に、都で流行っている可愛い産衣うぶぎを贈るように頼んだ。

 商人が帰ると…。

「…影はいる?」

 帰蝶が発するとどこからともなく忍者が現れた。

「はっ!ここに!」

 この忍者、土岐とき忍軍と呼ばれる忍者集団の一人だ。


 美濃は斎藤道三が下克上するまでは土岐家が仕切っていた。

 その土岐家に雇われていたが、道三が土岐を美濃から追放すると斎藤家に鞍替えしたのだ。

「土岐家はケチでさ、正直斎藤家の方が報酬良いんだよね

 さすが商売人だった道三は、その辺をよく分かってるのよ」

 土岐忍軍の頭は後日、瓦版屋の取材にそう答えたそうだ。

 その土岐忍軍は道三から「帰蝶の力になってやれ」と破格の報酬で頼まれていた。

 これが帰蝶の情報源であった。


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