第2話 捕縛

 義仲は目を覚ました。後ろ手に縛られ、簡易ベットに寝かされていた。毛布が掛けられているので、傍目にはケガ人が寝ているように見える。


 テントの中だった。布地の隙間から見える外は暗かった。すでに日が暮れているようだ。


 メイド姿の用心棒女のケイが見張りについていた。義仲が目を覚ましたことに気が付くと、テントの外に出て行った。


 ほどなく優華がケイとテントに入ってきた。


「何の冗談だ?」と義仲。


「逃げられないように捕まえたの」と言いながら、優華は義仲の枕元に座った。


「なぜだ?」と義仲。


「命の恩人に、お尋ね者になってほしくなかったのよ」と優華。


「あんたが何も言わなけりゃ、お尋ね者にはならんよ」と義仲。


「そうかしら」と優華。「私が言わなくても、私の従者たちが見ているのよ。すぐにばれるわ。そうなれば逃亡の幇助で、私も巻き添えになるかもしれないのよ」


「あんたの手のものだろ」と義仲。「口止めすれば、すむことじゃないのか」


「誘拐された私にとって、家に帰るまでは戦場なのよ。何が起こっても不思議じゃないわ」と優華。


「スパイを泳がしてるのか?」と義仲。


「言えないわ」と優華。


「俺はどうなる?」と義仲。


「脚を負傷したので、麻酔をかけて運んだってことにしといたわ」と優華。「ここは境界パトロール隊のキャンプよ」


「俺はここで連中に引き渡されるのか?」と義仲。


「あなたを師団本部まで運ぶことにしたの」と優華。「うちの近くだから」


「パトロール隊の連中はいい加減だな」と義仲。


「余計な手間が減って喜んでたわよ」と優華。「おとなしく負傷者として寝ててちょうだい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る