成仏できないのは……。

「いやーー、成仏出来ないのはちゃんと希子に告白してないからかなーーって思って」


「そんなの生きてる時にいくらでも時間あったよね?今さら、私が手伝うとか何の罰ゲーム」


「罰ゲームって、そんなつもりないよ。ただ、俺が触れられるのは星宮だけだからさ……。頼むよ」


「あのさ、それ。月森君を好きな私に頼む事?」


「好きって、そんなの高校生の時だろ?あれから、随分たってるわけだし」


 月森君は、私の気持ちがもう残っていないみたいに話してくる。


 むかつく、むかつく、むかつく。


 確かに、あれからかなりの時間は経った。


 でも、私はまだ月森君が好きなのだ。



「い、嫌よ!死んでるんだから夢にでたり化けてでも気持ちを伝えればいいでしょ!」


「星宮。何でそんなに怒ってんの?まるで、今でも俺のこと好きみたいじゃん」



 何なの!!


 月森君の言葉に私は怒って立ち上がる。


 勢いよく立ち上がったせいで、クラッとまた目眩がした。



「危ない。大丈夫か、星宮」



 月森君に支えられて、ドクドクと心臓が波打つのを感じる。



「や、やめてよ!気安く触るのは、セクハラなんだからね」



 死んでも、まだ彼女が好きだなんて。


 ズルいよ……。



「ごめん……星宮」



 月森君が落ち込んだのか透き通るほど薄くなっている。


 いかかフグか……?


 いやいや、ちょっと待って。


 もしかして落ち込んだら、月森君消えちゃったりする?


 えっ?マジで言ってる。


 ダメダメダメ、それは、困るって。


 絶対にいや……。



「待って、待って」


「何?」


「あのさ、月森君が本当に死んだのか確認させて」


「確認?」


「そうそう。お墓参りに行きたい」


「お墓参りか……。わかった!連れてってやるよ!」



 月森君は、私の両耳を両手で優しく塞ぐ。


 冷たい。


「何?」


「ちょっと待ってみ」



 月森君が耳に手を当ててくれると、暫くしたらフワフワした目眩がおさまっていった。



「これで大丈夫じゃない?」


「ど、どうやったの?」


「わかんないけど。幽霊は、治せるらしい。ちょっとの事ぐらいならな!あっ、酷い怪我とか病気は無理だから」


「ありがとう」


「じゃあ、服着替えろよ」


「えっ?」


「お墓、行くんだろ?」


「あ、あぁ。そうだね!今、着替えてくる」



 月森君のお陰で、動いた耳石がはまったのだろう。


 めまいはすっかりおさまっていた。


 タンスから服をとって着替える。


 月森君が、本当に死んだのを確認させてと言ったものの。


 お墓なんか行ったら、月森君が死んだのを認めなくちゃならないではないのか?


 そんなの……。


「やだーー」


 それってめちゃめちゃしんどい事じゃん。


 だって、私。


 お葬式とか行けなかったし、生きてた月森君とお別れしてないじゃん。



「星宮、ゴキブリでも出たのか?大丈夫か?ちょっと開けるぞ」


「や、やめてよ!開けないで大丈夫!ゴキブリは、出てないから」


「そうか!なら、いいんだけど」



 生きてた月森君とお別れはしてないけど、なぜか死んだ月森君はここにいる。


 ちょっと待って!!


 私は、急いで服を着替えて扉を開ける。


「うわっ!ビックリした。どうした?」


「月森君、死んだんだよね?」


「ああ。死んでるけど」


「月森君、死んだなら私と付き合ってよ」


「はぁーーーー?」


 盛大な大声を月森君は、あげた。


 そして月森君は、目を開いて驚いた顔を私に向ける。

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