参 想い遂げる夜
第11話
食事と入浴を済ますと、早々に二人は寝所に入った。
<font color="#4682b4">「鈴……」</font>
布団の中で、彦佐が鈴を抱きしめる。いつもの優しい抱擁ではなく、彼女を求めて。
<font color="#cd5c5c">「ん……彦佐……」</font>
裸にされた肌に彦佐が触れると、鈴の身体に奮えが走った。
栄治に触れられた時は嫌で堪らなかったのに、彦佐の手も腕も愛しくて、安心して身を任せられる。
唇を合わせながら、乳房を揉まれ、硬くなった蕾を指で悪戯されると、鈴の口から自然に喘ぎがもれた。
<font color="#4682b4">「胸が大きくなってる。赤ん坊のせいか?」</font>
豊かになった鈴の乳房に感嘆の吐息をつき、彦佐は張り詰めた彼女の胸の先を口に含んだ。
<font color="#cd5c5c">「あっ、ん…」</font>
<font color="#4682b4">「綺麗だ……鈴」</font>
闇夜に白く映える鈴の身体を、彦佐は丁寧に愛した。
豊かになった胸、丸みを帯びた腹部に我が子の存在を感じて、彦佐は身を震わせる。鈴が自分の子を宿していると思うと、この上なく愛しさが溢れてくる。
鈴は、彦佐に新しい家族を作ってくれた。彼女と子供と彦佐。子供はたくさん欲しい。彦佐に似た息子も、鈴に似た娘もたくさん欲しい。
そう考えて、彦佐が笑みをもらすと、鈴がどうしたの?と不思議そうに尋ねた。
<font color="#4682b4">「子供のことを考えていた。俺に似た息子だろうか、鈴に似た可愛い娘だろうか……娘なら、俺は甘い父親になりそうだと思って」</font>
それに、鈴が小さく笑う。
<font color="#cd5c5c">「あまり、甘やかしてはだめよ」</font>
<font color="#4682b4">「そうは言っても、鈴に似ていたら……とても甘やかさずにはいられないだろう。きっと、可愛いだろうな。子供の頃のおまえみたいに」</font>
柔らかな口調で彦佐は言い、鈴の胸に顔を埋めた。
鈴と彦佐の子が、やがて生まれてくる。娘なら、きっと鈴に似ているに違いない。
鈴に似た愛らしい娘。その娘の父親になることが出来る。
彦佐は幼かった頃の鈴に娘の将来の姿を重ね、幸福感に浸った。
<font color="#cd5c5c">「……彦佐に似た方がいい。私に似たらかわいそうだよ」</font>
溜め息を吐くようにして、鈴が小さく呟いた。
予想外の反応に彦佐は顔を上げる。鈴の憂いの表情を認め、彦佐は驚いた。
<font color="#4682b4">「かわいそう?鈴に似るなら、きっと可愛い子に違いないのに……なぜかわいそうだなんて言うんだ?」</font>
<font color="#cd5c5c">「彦佐……気を遣わなくていいのよ。私は……美人ではないし、普通と違うんだから」</font>
悲しそうに言う鈴に、彦佐はますます驚いた。
<font color="#4682b4">「鈴?本気で言ってるのか?」</font>
鈴はムッとした。
わざわざ、確認することでもないだろうに。
自分の容姿については、嫌というほどわかっている。子供の頃から嫌というほどわからされてきたし、自分でもその通りだと思う。
白過ぎる肌、色素の薄い髪や瞳。
出来ることなら、髪を黒く染めたかったが、鈴の家は貧しくて、そんな余裕もなかった。
生まれてくる子には、そんな思いはさせたくない。
<font color="#cd5c5c">「彦佐も言ったじゃない。私の髪や瞳は……みんなと違うって」</font>
<font color="#4682b4">「それは…子供の頃のこと…か?確かに言ったが……」</font>
彦佐の驚いた表情は消えず、鈴は彼から視線を外した。
<font color="#cd5c5c">「こんな髪や目の色じゃ…気持ち悪いって思うのは、仕方ないと思うから」</font>
<font color="#4682b4">「俺はそんなことは言っていない!」</font>
殴られたようなショックを受けながら、彦佐が声を荒げた。
確かに、彦佐が言ったわけじゃない。彦佐はただ、彼女が変わっているという形容をしただけだ。
けれど、他の男の子たちと同様に彦佐もそうに違いないと、鈴は信じてきた。
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