世代、環境

白川津 中々

◾️

どん底だった。


高校を卒業し、地元の工場で安く使われる日々。酒に溺れ、女に貢ぎ、仕事にも私生活にも熱が入らない。目標もなく生きている苦痛を忘れるため快楽に逃げる、情けない人生である。


「生まれが違うんだよ。俺とじゃ」


同い年で成功している人間や、努力している人間を見ると焦燥に駆られ、惨めな言葉を吐き捨てるのが日課となっていた。生まれが全て。そう思えば、今の環境にいることも、自分が何者にもなれないことも、誰かのせいにできるから。このまま生きていたら絶対に後悔するのに、俺は変わらず酒と女に逃げ続ける。「今が楽しけりゃいいんだ」「人生死ぬまでの暇つぶし」などと、さも分かったような口をきき、人生がどうにもならないと知っているからあえてこうした生き方をしているという風を装う。そのくせ、一人の時に金の勘定をしていると、堪え難い寒さに震えるのだ。明日を生きる目処が立たない生活。借りようか、物を売ろうかと、追い詰められていく状態。刹那に消える金に一と月悩まされ、給金が入れば笑顔で溶かし、また悩まされる。先のない、進歩のない日々。今日もまた、酒に酔い、女を買うのだ。


そうして今日も、居酒屋で一人、カウンターに座っている。

店に置かれたテレビには同年代の野球選手がボールを投げている。苦しい。

歳だけ重ね、なにもないくせに、一人前に悔しいという気持ちだけはあって、それを掻き消すように、享楽に耽る。


ただ、逃げたい。

現実から、己から。

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