Eight Lights

えいとら

1 何かが欲しかったからジャズを

 「とにかく音楽をはじめたい」という想いから大学のサークルに入ったけど満足ができず、先輩の縁からジャズバーを紹介してもらった。


実は最初はジャズのことをよく理解できていなかったけど、とにかく「音楽」が知りたくて、大人(というか老人)だらけのお店のドアをくぐった。


そのジャズバーがたまたまワークショップ(音楽教室)をするお店だった事が幸い(あるいは災い)し、それから数年間そのジャズバーに通い詰める事になる。


 その日から僕の8畳のアパートのブックシェルフスピーカーからは、常にジャズが掛かっていた。


誇張無く、24時間、365日。僕はジャズを聴き、ドラムの練習をしていた。


 本当にどうかしてたって思うぐらいに僕は、ジャズの世界に急降下着陸し、どっぷりと頭まで浸かりきった。


その時の僕は……「ジャズは好きか?」とか「音楽は好きか?」とか聞かれると「いいえ」と即答するぐらいにへそ曲がりだったけど……実際、「楽しい」という感情だけで音楽漬けの日々を送っていた訳じゃなかった。


 当時の日本は(も?)不景気真っ只中で、就職した先輩たちの話を聞いても暗い話ばかり、そして大学の授業は想像の何倍もつまらなく、ついでに学校の友達とも話が合わない。


だからその時の僕は、そういう毎日に焦りを感じていたんだと思う。とにかく1日でも早く、「何か」を得たかったんだと思う。


その「何か」を得るためには難しい音楽の筆頭であるジャズは、当時の僕にとって、「ちょうど良かった」んだと思う。


 そんな事を心のどこかで思いながら、僕はジャズの世界に入って行った。

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