第18話

匂い付きのボールペン片手にスケジュール帳とにらめっこしていると、和泉くんが寝返りを打ったので、慌てて視線を向ける。




「(いつまで寝てるんだろ、……疲れてたんだなぁ)」



多分、私のせいなのだろうけど、私はなにもしてないし、和泉くんが勝手にまた杞憂していただけだ。…いや、私も倒れたから悪いといえば悪い。



ーーにしても、倒れた理由についてはなにも聞いてこないのが和泉くんの変なところである。貧血にしてはおかしいと思うだろうに、なにか聞いてこないかドキドキしていたけど、これは私の杞憂に終わった。


私が倒れた、っていうことに集中しすぎてこんがらがっていたんかな。




「……ん、」



ぱちり、と和泉くんが目を開く。彼は瞼を擦りながら起き上がり時計を確認したが、特にリアクションをせず、私に視線を移した。……寝ぼけてるなこれ。




「和泉くん、今21時過ぎだけど…?」


「うん」


「……あ、お腹空いてる?」


「……空いてる、かな」


「ほら、おにぎりあるから、食べて帰ろ」


「…うん」



やけに素直で口数の少ない寝ぼけた和泉くんは、おにぎりの入ったレジ袋を受け取り、ガサガサとビニールを剥いでレジ袋の中に入れて、食べ始めた。

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