帰り道

昼休み。いつもの4人は悠斗の席を囲んで弁当を食っていた。

「やっぱ悠斗の唐揚げうめ〜」

「もう一個もらっていい?」

「いいよ」

ガヤガヤしていると、後ろの扉から舞衣が入ってきた。

「あ、藤咲ちゃん」

大晴が呼ぼうとした時だった。

「っうわ!」

舞衣が何かに躓いた。

「危ないっ」

転ぶ寸前だった舞衣を、理人が支えた。

「「「「!!?」」」」

「あ...ごめん理人。」

「大丈夫。怪我してないか?」

舞衣が理人と親しそうに話している。その間、4人は、

「ちょ、あっ!俺の膝に唐揚げ落ちてんだけど!」

「うるさい秀」

「お前か?汚ねぇー、ズボン汚れたんだけど」しょーもない会話を繰り広げていた。


放課後、舞衣は掃除用具入れに箒と塵取りを入れ、鞄を持って教室を出た。

「あれ、藤咲さん。」

職員室のある廊下から、昴が出てきた。

「あ、菊葉くん。あれ、こんな時間まで学校いたの?」

「うん。先生の手伝いしてた。」

昴は提出期限をちゃんと守ったり、なんやかんや大人しいかったりする姿勢が買われ、クラスの生活委員になったのだ。

「大変だねぇ、生活委員も。」

舞衣と昴は一緒に帰ることにし、学校を出た。

昴は初めて会った時よりもずっと喋るようになったし、目も合うようになった。

(でもやっぱ、まだ距離あるなぁ)

「藤咲さん、理人さんと仲良いの?」

予想外の質問に驚いた。

「ま、まあ、仲良いのかな」

カバンから水筒を取り出し、お茶を飲んだ。

「ふうん。好きなの?」

ストレートすぎる質問に咽せた。

「大丈夫?」

「大丈夫...。あんまり女子にそういうの聞くのは良くないよ...」

「そうなんだ。...好きなの?」

「だから...」

舞衣はカバンに水筒を入れた。

「理人はいとこだよ。ちっちゃい時から一緒にいるの」

昴は頷いた後、下を向いた。

「どうした?」

「...僕、人見知りだから、女子と話した事がなくて...。ごめんね」

「いや、謝る必要はないよ。」

舞衣は急いで謝った。昴の弱々しくなる声とおどおどした顔は、すぐに謝ってしまう気配を持っている。

「じゃ、また明日。」

「うん、じゃあね」

昴はT字路を右に曲がっていった。舞衣はまっすぐ進む。信号が赤になっていたので、舞衣は止まった。

(なんか、不思議な子だなぁ)

舞衣はそう思った。

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