可愛いって言ってくれるあなたみたいになりたかった

鞍馬欄子

可愛いって言ってくれるあなたみたいになりたかった

のあちゃん、お久しぶりです。お元気ですか?

あなたと出会ったのは15年前、精神病院の閉鎖病棟の中。あなたはとても綺麗で可愛くて華のある子。学校でもこんなに可愛い子に出会ったことはありませんでした。あなたと出会って、私はあなたと友達になりたかった。でもあなたはとても気まぐれだったよね。ニコニコお話ししてくれる日もあれば、そっけない日もある。きっと病気の影響もあったのでしょう。でも私はそれでも良かった。あなたとお話しできるだけで。

あなたはたくさんお洋服を持っていて、毎日ファッションショーみたいに色んな服に着替えていた。ふわふわひらひらの真っ白いロングワンピース姿は、モデルさんみたいだった。「入院中なのに」ってやっかむ声もあったけど、そんなところも可愛かったよ。

「私も勉強したい」って言って、私の参考書を借りに来たこともあったね。結局1回きりだったけど、そういうところも好きだった。


お互い退院した後でも、通院時間が重なって何度か会うことがあったよね。

その度に、あなたは必ず私の全身を見る。女の子らしい服を着ていれば、あなたは弾けるように「可愛い!」と言ってくれた。私がパーカーにデニムみたいなゆるっとした格好をしていれば、あなたは何も言わず、ちょっとがっかりしたような顔をする。そんなわかりやすいところも好きだった。可愛いあなたが「可愛い」って言ってくれるの、すごく嬉しかった。誰にも認めてもらえない私を肯定してくれるみたいで。


もう最後に会ってから10年以上たったね。

今の私を見たら、あなたは可愛いって言ってくれるかな?ちょっと太っちゃったし、年齢とともに着る服も変わりました。あれから私は上京したけれど、東京は可愛い子が多くて、私なんか到底敵わない。でも、東京でどんなに可愛い子に会っても、あなたが一番可愛いと思う。

あなたは当時携帯電話も持っていなかったから、連絡先も知らない。きっともう会うことはないでしょう。それでも、あなたのことを忘れることはできません。あなたに会えるかもしれないと思いながら通院していた日々、あなたともっと仲良くなりたいと思っていた日々、大事な思い出です。

のあちゃん、私と出会ってくれてありがとう。元気でいてね。

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