ぼくのママはくそうずになりました
機村械人
ぼくのママはくそうずになりました
7月23日 土曜日 天気:はれ
『今日から夏休み』
[父、母、男の子、三人家族のイラストが描かれている]
きょうから夏休みです。
ながいお休みなので、いっぱいあそびたいです。
でも、べんきょうもさぼらずにやります。
あと、明日から、パパと、ママと、かぞくでパパのじっかのいなかに帰るよていです。
すごく楽しみです。
7月24日 日曜日 天気:はれ
『パパのじっか』
[パパ、ママ、男の子を乗せた車が走っているイラスト]
きょう、パパのじっかのいなかに行きました。
帰せいりょこうです。
パパのじっかでは、おじいちゃんとおばあちゃんがむかえてくれました。
二人とも元気そうでよかったです。
おやつにスイカを食べて、ばんごはんにおすしを食べました。
おいしかったです。
あしたも楽しみです。
7月26日 火曜日 天気:くもり
『けんか』
[パパとママが怒った顔をしているイラスト]
きょう、パパとママがけんかしていました。
パパもおじいちゃんもおばあちゃんも、ママをおこっていました。
ママもおこって、大きなこえでさけんでこわかったです。
夜に、ママがぼくといっしょにおうちに帰ろうと言いました。
パパは?ときいてもなにも言ってくれませんでした。
なかなおりしてほしいです。
7月29日 金曜日 天気:はれ
『ママがいなくなりました』
[笑っているママのイラスト]
きょう、朝おきたら、ママがいませんでした。
パパにきいたら、ちょっとようじで出かけただけだと言っていました。
お昼はおばあちゃんがソウメンをゆでてくれました。
ごごは、おべんきょうをしました。
おべんきょうをさぼったから、ママがおこっていなくなったのかもしれません。
早く帰ってきてほしいです。
夜は、パパがでまえをとりました。
8月2日 火曜日 天気:はれ
『▇▇▇▇▇▇▇▇▇ちょうそう』(※最初に書いたであろうタイトルが塗り潰されて、その横に新しいタイトルが書き直されている)
[横たわっているママのイラスト]
ママが見つかりました。
ママは、おじいちゃんのいえのうしろのくらの中でねていました。
パパから、ママのねているところを日記にかくように言われました。
なので、ママの絵もいっしょにかきます。
ママはぜんぜんおきません。
ママはちょっとふとった気がしますけど、しつれいなので言ったりしません。
8月4日 木曜日 天気:はれ
『▇▇▇▇えそう』(※最初に書いたであろうタイトルが塗り潰されて、その横に新しいタイトルが書き直されている)
[横たわっているママのイラスト(皮膚が灰色に塗られている)]
ママはねています。
おきません。
からだがはい色になってきた気がします。
はえがぶんぶんうるさいです。
早くおきて、おふろに入ってほしいです。
パパに言われて、きのうときょうの日記のタイトルをなおしました。
8月6日 土曜日 天気:あめ
『けちずそう』
[横たわっているママのイラスト(全身が赤と黄色が混ざった色で塗られている)]
ママのからだから血とか、いろいろ出てます。
ママがねているおふとんがよごれてます。
めとおはながないです。
はえがぶんぶんうるさいです。
8月8日 月曜日 天気:はれ
『のうらんそう』
[横たわっているママのイラスト(全身が黒一色で塗られている)]
ママがママじゃなくなりました。
まっ黒いべたべたしたものになりました。
おふとんがよごれています。
はえがぶんぶんうるさいです。
8月9日 火曜日 天気:はれ
『▇▇▇しょうおそう』(※最初に書いたであろうタイトルが塗り潰されて、その横に新しいタイトルが書き直されている)
[花火や屋台のイラストと、その横に青黒い人型のイラスト]
きょうは、パパとおじいちゃんとおばあちゃんと夏まつりに行きました。
わたあめとたこやきを食べました。
おいしかったです。
花火がすごく大きくて、楽しかったです。
帰ってきたあと、ママにおまつりのお話をしました。
わすれて夏まつりとタイトルに書いちゃったので、直しました。
8月10日 水曜日 天気:くもり
『たんそう』
[横たわっているママのイラスト(人型の黒い塊に、小さな虫が群がっている)]
ママにいっぱい虫がくっついています。
きたないので取ってあげようとしたら、さわっちゃいけないっておこられました。
ママがどんな顔だったか思いだせません。
パパとおじいちゃんが夜中までなにかそうだんしていました。
ぼくは早くねました。
8月13日 土曜日 天気:あめ
『さんそう』
[横たわっているママのイラスト(人の形をしていないなにか)]
ママの手やあしやあたまがとれてバラバラになりました。
かみのけだけいっぱいのこっていました。
くっついていた虫はなくなりました。
パパとおじいちゃんが犬を五ひきつれてきて、くらの中に入れました。
夜はしらない人がうちに来てばんごはんを作りました。
8月14日 日曜日 天気:くもり
『こつそう』
[横たわっているママのイラスト(白い骨が転がっている)]
ママがほねだけになりました。
くらの中で、パパとおじいちゃんが連れて来た犬がぜんぶ死んでいました。
夜はしらない人がうちに来てばんごはんを作りました。
8月15日 月曜日 天気:くもり
『しょうそう』
[燃やされている骨のイラスト]
きょうは、しらない人たちがいっぱいおうちに来て、ママのほねをおにわでやいていました。
ママのほねはやけて、ハイになりました。
ハイはだいじにハコにしまわれました。
パパとおじいちゃんとおばあちゃんとしらない人たちが、すごくよろこんでいました。
かんせいだ、くそうずのかんせいだ、と言っていました。
みんなうれしそうで、ぼくもうれしかったです。
月 日 曜日 天気:
『(空白)』
[(空白)]
以上の形にて、▇▇家代表▇▇の戸籍上の妻▇▇と、子▇▇の献身により、ここに▇▇▇▇▇▇の行を完遂。
▇▇▇▇大臣、▇▇▇。
▇▇協会代表、▇▇▇▇▇。
▇▇▇▇先導師、▇▇の可及的速やかな死を希求し、▇▇▇▇主導による日本国再建計画の進行を▇▇する。
(1994年、3月2日。▲▲県▲▲▲市山奥の民家(空き家)から発見された絵日記。この空き家はかつて、某宗教団体の自己研鑽施設として運営されていた)
ぼくのママはくそうずになりました 機村械人 @kimura_kaito
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます