突然に現れた人

第1話

『お願い!!どうしても一人人数が足らないの!!』





そう言われて無理やり合コンに参加されられたのが、午後7時ごろ。



せっかく早く帰れたって言うのに家でゆっくりしたかったな……。


そんなことを思う私は、まだ23歳で。

本当なら、恋やら夢やらを追いかけていい年頃なんだけれど、就職して三年目に入ったばかりのくせに仕事が忙しすぎるせいか、そんなことを考えている暇はないんだよね。




…まぁ、そのせいで最近まで付き合っていた彼とは別れちゃったんだけど……。







「汐里ちゃんは何飲む?カクテルも結構あるよ。」





お洒落なダイニングレストランの個室。


目の前に並べられている料理は、見た目はいいんだけれど………、





「ビール、おかわりで。」


「え、あ…わかった。待っててね。」





箸で目の前にあったカルパッチョをつつく。



色…悪っ…。


少し暗めの照明で誤魔化せているつもりかもしれないけれど、

明らかに変色してるし、皆は気にしないかもしれないけれど臭いだって気になる。





料理に手を付けるのをあきらめた私は、

名前も確かじゃない男の隣で頬杖をついた。





「汐里ちゃんてクールだね?」





早く時間が過ぎればいい。


そう思っていたけれど、隣の男はそっぽを向いている私にめげもせずに話しかけてくる。


さっきは飲み物だって注文してくれたし、マメな男だ。





「そう?」


「うん。楽しくないのかなぁ…って、ちょっと気になっちゃって。」





ゆっくりとその男に視線を向ければ、

どちらかと言えば可愛らしい顔をした彼の目が大きく見開かれる。


そんなに驚かなくてもいいのに。





「そうだって言ったら?」


「………え、」





だけど、どこまでも失礼な私は、彼を怒らせたいんだろうか。


彼だって一応大人だし、そんなことはしないのかもしれないけれど。




案の定、顔色一つ変えない彼は、むしろなんだか嬉しそうに顔を綻ばせる。




何?ドM?


ピクリと眉を顰めた私は、目の前に運ばれてきたビールを口に運んだ。

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